第2話嫉妬 2

「なぁ…鈴木。頼みたい事があるんだけど…」


柏木は、申し訳なさそうな顔をしながら、こちらを見ていた。

あの柏木が、俺に頼み事をするなんて………笑える。



「どうしたんだよ?」


俺は、柏木のミスにわざと気づいていない降りをする。



「書類の一部を家に忘れて来ちゃって…。今、ここから離れる訳にいかないんだ。俺の代わりに、取りに行ってくれないか?お前、どうせ雑用しか、やる事ないだろう?」


ムカつく…。

一言多いんだよ。

その一言にムカついた俺は、何も答えなかった。




「なぁ!今度合コンセッティングするから!頼むよ!」

合コン…?

柏木主宰の合コンなら、もしかしたら…。



「お前が前に可愛いって言ってた、受付のみなちゃんも呼ぶから!頼むよ!」



受付のみなちゃんが来る…?

ずっと憧れていた、みなちゃん。



俺より全てが上手の柏木に、借りを作るのも悪くはない。

そう思った俺は、柏木の願いを聞く事にした。


自宅の鍵と、簡易地図を受け取った俺は、駐車場に降りた。



ナビで行く方が早いだろうー…。



生まれてから今まで、彼女が居た事はない。

友達も少なかった俺は、働けば働いただけ、金が残った。




貯まった金で車を購入。



柏木なんて、毎晩遊び歩いているから、車を買う金なんて持っておらず、今だに電車通勤だ。




結婚するなら、遊び人で金がない柏木より、真面目で金がある俺の方がいいに決まっている!




なぁ?そうだろう?

みなちゃん…。




この書類をあいつに渡せば、みなちゃんと知り合えるきっかけが出来る!


ハンドルを握る手に力が入る!




みなちゃんと手を繋ぎたい。

みなちゃんを抱き締めたい。

みなちゃんを………。

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