800円プラス税で真理が買える世の中である。――No.11

 ラ・ロシュフコー風の箴言集である。
 個人的に、箴言、アフォリズムのたぐいが大好きで、『箴言集』ならば十周は讀んでいるはずだ。ほかに『侏儒の言葉』や『生誕の災厄』あたりもくりかえし讀んでいる。愚生は、二千頁で一日をえがくことができれば――『ユリシーズ』――、一文で世界をえがくこともできるとおもう。其処が箴言の面白いところだが、日本国民はなにゆゑか、箴言をこのまないらしい。箴言をあつめたサイトは皆無にひとしいことからもわかる。アフォリストにたいして、なにをえらそうなことを、とおもうのだろうか。海外では『マーフィーの法則』の素人版を蒐集しているサイトもあるのに! (愚生は英語が讀めない!)そんななか、本作を発見した。掌編小説風の箴言があるのは芥川龍之介からの影響だろうか。なかでも一篇えらぶのならば、『800円プラス税で真理が買える世の中である。誰もが真理に気づかないのも、頷けるのではないかね?』である。『800円プラス税で真理が買える世の中である。』ならば愚生でも書けそうだが、『誰もが真理に気づかないのも、頷けるのではないかね?』と意表をつかれた。後半によって、本箴言は非常に深遠なものになっている。
 残念ながら、すでに連載はおわっているようだ。著者には箴言の伎倆があるはずなので、さらに讀みたかったが。