3.一歩

体育の時間。


「佐久間、体育館からゼッケン取って来てくれ」

「は〜い。」

俺は入学してすこし後のホームルームでなんとなくの流れで体育委員にさせられ、今日の授業でも神田先生にこき使われていた。

先生の指示に従い俺は体育館の倉庫にゼッケンを取りに行った。


体育館の入り口の横に座って授業を見る櫻井さんの姿を見つけた。ドキドキを抑えながら彼女の前を通り過ぎ倉庫に向かう。倉庫内でゼッケンを探しながら俺は考えた。

(このままではダメだ。何も進まないし、変わらない。後悔だけはしたくない、、、)

そう俺は心の中で自分に言い聞かせ櫻井さんに話しかける決心をする。ゼッケンを見つけた俺は来た時の何倍ものドキドキを感じながら倉庫を出て、彼女の前で立ち止まる。

「櫻井さん、見学?」

「はっ、はい」

「体調でも悪いの?」

「あの、その、私あまり体が強くなくて、、、」

「あっ、そうなんだ、、、ごめん、、なんか」

「いえ、べつに。それより、それ、早く持っていかなくて大丈夫?」

「そうだった。じぁね。」

俺は走ってその場を離れる。

(初めて見た時から彼女にはどこか儚げな印象を持っていたが本当に体が弱いのか)彼女のことを少ししれて嬉しくなった。


そして、もっと彼女に話しかけようと決心した。

それからは、朝登校したら挨拶をしたり、授業でわからないことがあったら聞いて見たりと話しかけるようにした。

ある日の午前の授業が終わり俺は巧と学食に向かっているといつものにやけ顔で巧が問いかけてくる。

「最近頑張ってるな。」

「何が?」

「櫻井さんのこと、最近よく話しかけてるじゃん。」

「まぁね。そうだ巧相談があるんだけど、、」

「なになに。」

「確かに最近頑張って話しかけてはいるわだけど進展がなくて、そこで櫻井さんもいつも学食だからなんとか一緒に食べられないかなと思って、、」

「よし、任せろ。そうと決まれば早速作戦会議だ」

巧は楽しそうにスキップしながら学食へ入っていた。その後ろ姿を俺は小走りで追いかける。


席に着いた俺たちは早速作戦会議を始める。

「まぁ、飯にさそうぐらいは簡単だ」

「そうなの?」

「ああ、櫻井さんがいつも一緒に食べてる女の子達いるだろ?俺知り合いだから声かけてやるよ」

「本当に、ありがとう。てか、巧女の子の友達多いよな、女の子達に囲まれてるのよく見るし」

「まあな」

巧は誇らしげに笑う。確かに巧は男の俺から見てもイケメンだと思う。本人は身長が低いのがコンプレックスだと言うが、女子達はそれを可愛いと言っている。休み時間に話しかけに行くとよく女子と話していて話には入れない時もあるし、、、

「巧は彼女とか気になることかはいないの?」

「今はいないかな。」

「そうなんだ、、、今わってことはおまえ」

「中学時代は彼女いたけどな」

「だよなー。まぁ、いろいろ教えてください先輩。」

「任せなさい。そうだ、飯のことは俺がはなしとくけどそれだけじゃダメだ。」

「それだけじゃダメって、何をすればいいの?」

「それはな」

「それは?」

俺は息を飲む。

巧は何かたくらんだかをで言った、

「遊びに誘うんだ」

「えっ、遊びに」

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