第9話 抜けずの刀。えっ?なにそれ



『※絶対秘匿※「霊刀クサナギ・ムラクモ」が女神デルエルより委譲されました』

『受託を了承しますか?』


 なんだよ、これ……?

 デルエルって誰なんだ、おい。

 アカシ先生、女神ってなんなんだ?

 デルエルってのは、神様とか言うやつなのか?


『当該キーワード「デルエル」の情報は表示できません』

『絶対秘匿指定ワードの検索未遂を確認』

『検索履歴の消去を開始』

『完了しました』


 絶対秘匿ってなんだよ、女神ってやつはナニモンなんだ!?

 いままでアカシックレコードで検索を出来なかったモノは何ひとつない。

 

 ―――――ありえない


 なんなんだ、「女神」や「デルエル」とかってのは。

 この世界の、世界線アルタの管理人なのか?

 まさか、俺を転生させた張本人だったり………するのか?


 ………くそ、デルエルってなんなんだよ!


『当該キーワード「デルエル」の情報は表示できません』

『絶対秘匿指定ワードの検索未遂を確認』

『検索履歴の消去を開始』

『完了しました』


 ―――――くそッ!!

 

 本当に不愉快だ。

 誰だか知らないが、向こうの勝手な都合でコッチに連れてこられて。

 その上こんな姿に変えられて。

 挙げ句の果てには、何処かから他人の見世物にされているような現状。

 そのくせ、俺からは見せねえときた。

 ムカツク。

 ふざけるな。

 人の人生をなんだと思っているんだ。

 俺はサーカスの笑えない道化か何かか?

 本当に、イラつく。



 アカシックレコード、さっきのメッセージを表示してくれ。


『※絶対秘匿※「霊刀クサナギ・ムラクモ」が女神デルエルより委譲されました』

『受託を了承しますか?』


 ………霊刀ってのは、なんだ?


『当該武具「霊刀クサナギ・ムラクモ」の説明をしますか?』


 ああ、頼む。


『了。当該武具「霊刀クサナギ・ムラクモ」の説明をします。


 「霊刀クサナギ・ムラクモ ランクS+」…神に見初められし武具にして、神話級の力を持つとされる二振りの刀。草薙の刃は一閃にして万敵の首を断ち、村雲の刃は一閃にして天を裂き地を割る。神獣種のみが持つとされる"神器"にも相当する、神に愛されたニ刀である。


 ―――――以上です』


 ………なんでこんなものが。


 女神ってやつは何がしたいんだ、まったく。

 こんな化物みたいな武器をどうしてゴブリンの俺なんかに。

 こういうのは普通、勇者とかに渡すもんだろ?


 でもまあ、もらったモンはしょうがない。

 受け取っておくとするか。

 もしかしたら、女神ってやつも悪気があったわけじゃ無いかもしれないし。

 今回だけは許容範囲だ。


 許してしんぜよう、ぬははは!!


 そんじゃあアカシ先生、受託を了承!


『本当によろしいですか?』


 はい、問題ナッシングでござる。


『了。「霊刀クサナギ・ムラクモ」の転送を開始します』

『転送準備完了』

『上空にご注意ください』


 ―――――え。


 上………空?

 うーん?


 ヒューーー


「……ゲッ」


 ガシャンッ!!


 上空って、そういうことね…………。







 両手にしっかりと持った、身の丈の三倍ほどある二本の大太刀を眺める。

 黒漆を塗り込んだ艷のある鞘に、しめ縄のようになった紫色の装飾がくくりつけられている。

 もう片方は紅色である。

 片割れには波紋と笹の葉のような意匠と、もう片割れにはうごめく竜と積雲を描いた彫刻の鍔が、黄金色に耀いている。

 編み込んだ白革の柄の頭には、金細工で出来た五枚花弁の華が彫られている。

 

 互いの名はクサナギ、ムラクモ。

 万物を断つ、神の宝刀である。



 頭のてっぺんにタンコブできた。

 イテテ…。 

 刀のせいで意識もって行かれそうになった。

 あぶないあぶない。

 転送ってもっとマシな場所に出来ないの?

 なんでわざわざクリーンヒットな頭上なの、ねえ?

 

 今は夜中、多分。

 いつもみたいに焚き火を焚いて、いきなり黄金○説ですよ。

 いちおうアークも焼いてみたけど、食べる気が起こらないから却下した。

 だから道中拾った木の実をかじってたんだけど。


『スキル【毒耐性LV1】が【毒耐性LV2】にレベルアップしました』


 死にかけたよ?

 結構危なかったんだよ?

 気合いで跳ね返したけどね、フフン!


 LVも8になったし、そろそろマックスにして進化したいよね。

 進化先はなにがあるんだろうか。

 アークは「懸賞首オーダー」だから絶対にないとして。

 無難にホブゴブリンか?

 でもなあ。

 ホブに進化したらそこからの進化先はゴブリン系統に定着しちまうからなあ。

 やっぱゴブリン街道から脱却したいのよ、俺は。

 人間になりたいアキラくんです。


 おれたちゃゴ~ブリ~ン人間な~のさ~♪


 懐かしいね。



 そんじゃまあ、さてと。

 本題に入ろうかな?

 このクサナギとムラクモ、これが俺に使えるかどうか。

 装備にはレベルが足りてませんとか、冗談じゃねえからさ。


 鞘を左手で持って、柄を握って。

 まずはそーれ、抜刀!!


 ―――――………。


 あ、あれ?

 よーし、抜刀!!


 ―――――………。


 ぬ、抜けねえ…………!

 なんでや、やっぱりレベルが足りへんのか!?

 貰ったのに鞘から抜けんて、どういうこと……。

 ええー……。


 まあ、そんなコッタろうとは思ったよ。

 思ったけど、けれどね!?

 抜けんてのはありえんと思うのよ俺ェ……。



 なんでなん、やっぱり俺にチート無双はさせてもらえんのか。

 女神デルエル、許すまじ………ッ!!

 くぅ(泣)。

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