12月4日

「あなたは何故ここに来るの雨宮くん」

「恒例のやり取りは置いといて、聞いてほしいことがあるんだ」

「改まってどうしたの雨宮くん。明日を生きるお金もなくなったというなら、私の兄に頼めば臓器と交換に100万ほど」

「半年ほど前から好きだった。付き合ってください」


 僕はある日日岡さんに、交際を申し込んだ。

 たっぷり5秒ほど、彼女は目をまんまるにしてパチパチ瞬きした。

 けれどもしばらくして彼女は、いつも無表情か意地の悪い笑みしか浮かべない彼女は、万人が見惚れてしまうような穏やかな笑顔でこう言った。


「……私の病気が治ってここから出られたら、そのときは、デートしましょう。キスしましょう。エッチしましょう」


 言い終わる頃には、いつも悪い冗談を言うときの意地悪スマイルになっていたけれど。

 最後の最後。僕から顔を背けて肩を震わせて、噛みしめるように、言いにくそうに、こう言った。


「生きる目標をくれて、ありがとう」


 その日ぼくは、情けないことに真っ赤になって一言も離せないまま、なけなしのお金で買ったりんごを差し入れとして置いて帰った。

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