第29話:本家の邸内・カラス天狗

本家の邸内に入ると、警備の者たちや女中たちが出迎えた。

邸内は薄暗く蝋燭の灯りで見える程度だ。

「お蝶さん・・・」愛人のお松。「御前がお待ちしております。」

「ええ・・お松様・・・わかっております。さぁ、皆さん、こちらへ・・」

皆、お松とお蝶の後をゾロゾロとついていった。

まるで、迷路のような廊下だ。

「おいおい」山師。「何だよ。これじゃ、薄暗いし、本気で迷路じゃね~か。」キョロキョロ。

「フ、さっきから文句ばっか。用もなく着いてきたのは、あなたでしょ。」

お篠。

「お篠ちゃん。酷いね。用は、隠し財宝だよ。」

おいおい、そんな大声で言ってンなよ・・・・

「ったく・・・グルグル・・・ただでさえ、方向音痴なんだからさ・・・」

まったくだ。あのお松とか、言う女中。本気でオレたちを道に迷わそうとしてるンじゃないか。

かなり歩いた。その時、脇の奥の方に男の影があった。しかもその男はカラス天狗の仮面をかぶっていた。

ん、あれは・・・だが、そのカラス天狗を追って脇へ入ろうとしたが、

腕を捕まれ、

「ダメですよ。そちらは・・・」お松だった。

え・、すでに、カラス天狗の姿は陽炎(かげろう)のように消えていった。

「今・・そこにカラス天狗の仮面をかぶった男が・・・」

「カラス・・」お松が「何かの見間違いでしょう。」

見間違い・・・そんなはずはない・・・・

「おいおい」山師。「まだ幽霊の出る時間じゃないぜ。」

「わかっている・・・そんな事は・・・」

だが、どこへ消えたンだ。あのカラス天狗は・・・・




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