えっ、女の子になっちゃった?

@a-isi

第1話 ◆突然の朝

◆突然の朝

  

チチチチ・・・・

どこからか小鳥の鳴き声が聞こえてくる。


東向きの窓から机の上に、まぶしい朝日が射しこんできている。


「うう~ん。 もう朝かぁ・・・って、し、しまった。 やっぱ寝ちまったかぁ!」


そう、今日は2学期の期末試験初日である。


なのに昨日は夜遅くまで友達と遊んで家に帰って来たのは11時を過ぎていた。


それから、さっとシャワーを浴びて、机に向かったのは良いけれどウトウトしているうちにすっかり寝込んでしまったようだ。


しかも、今日は数学と英語の2大難関だったっけ。


「む~う、ここはもうヤマが当たることを祈るしかないな!」


オレの名前は”山口美樹”15歳、中学3年生である。

「ミキ」と言っても女じゃない!


でも病院なんかの受付で名前を呼ばれる時は、たいがい”女”と間違われる。

小学校の時からクラスの皆によくカラカワレタし、この名前は大嫌いである。


「美樹~! いつまで寝てるの。 早く起きなさ~い。 遅刻するわよ~!」

下から母さんが、大声で叫んでる。

母さん。 頼むからもう少し優しく起こしてください。


「さあ、しかたない。 それじゃ~起きるか!」

オレは気合を入れてパジャマを脱ぎ、Yシャツに着替え始めた。


「う~ それにしても寒い~」

床の冷たさに思わず爪先立ってしまう。


そして、羽織ったYシャツの胸のボタンを留めようとした時・・・

ふにょん・・・何かやわらかいものが


ふにょん?


「うん?・・・なんだ? 胸が腫れてる。 昨日何かにぶつけたのかな?」

オレは1階に降り、洗面所の鏡で自分の姿を映して見て、驚きのあまり凍りついてしまった。


「なっ、何だこれ?」

そこに映っていたものは、紛れもない女の子の胸。 そう、オッパイだ。

まさか名前が女みたいだからって、胸まで?


「夢? そうだ。 まだ夢を見てるんだオレ。 な~んだ」


オキマリであるが、頬をオモイッキリツネッテみる。

「ぎゃ~ イテテ! ゆ、夢じゃない~」


再び鏡の前で、両手を胸に当てて見る。 ポヨ~ン。

「どうして? 何で?」

もう何がなんだかわからない。 パニック状態だ。


「美樹~早くしなさい! もう8時10分よ~!」

え~い。 しかたない。 とりあえず学生服を着てしまえばわからないだろう。

なんてったって今日は期末試験だから休めないもんな!


急いで着替え、リビングへ降りていくと母さんが、こっちをじっと見ている。

「美樹・・・ その胸どうしたの?」

「えっ? な、なんか変?」

「なんだか女の子の胸みたい。 制服の中に何か入れてるの?」

「か・・・母さん。 ちょっ、ちょっといいかな」


オレは母さんの手を引っ張って、風呂場(脱衣所)につれていくと学生服を脱いで、いまオレに起きている現象を正直に見せてみた。


ポヨ~ン。


「まぁ・・・りっぱなオッパイ。 いったいどうしたの?」

「オレにだって良くわからないよ。 朝起きたらこんなになってたんだ! どうしよ~」


「なんだ? 朝っぱらから騒々しい。 美樹、どうした?」

ちょうど父さんがトイレから出てきた。


「あら、アナタ大変なの。 美樹の胸が女の子みたいになっちゃったのよ」

「胸? 美樹、お、おまえ。 もしかしたら冷蔵庫の中の薬飲まなかったか?」

「薬って? ・・・リポ○タンDなら昨日帰ってきてから1本飲んだけど?」


「やだ、アナタ。 それって研究中のあの薬?」

母さんが驚いた顔で、自分の口を掌で覆う。

「あぁ、たぶん。 美樹おまえ・・  ビンのラベル見なかったのか?」

「なんなんだよ。 その研究中の薬って? なんで家の冷蔵庫の中にそんなもん入れておくんだよ!」


「よく聞け美樹。 その薬はなっ! 染色体をコントロールする薬なんだ」

「な、なんだって?」

オレはいったい何の事を言われているのか理解できないでいる。

「その薬はね、お父さんとお母さんが共同で研究している薬なの。 子供を生む時、男女の産み分けコントロールが妊娠後からでも出来るようにする画期的な薬なのよ。」

すると母さんが、ゆっくり説明してくれたけど・・・

「そんな・・・これからオレはどうなっちゃうんだよ!」

「まだ実際の人間に使ったことは無いから良くわからないんだけど、ラットを使った実験では、100%性転換する」

父さんが自信に満ち溢れた顔でオレに言う。 それって、ちょっと違うだろ!

「って事は・・・ オレ・・女になっちゃうの?」

「そうだな。 必要ない部分は細胞がアポトーシスを起こし、必要な部分は新しく生成されるハズだが、どのくらいのスピードで変化が起きるかは・・・」


「ラットでは、どうだったの?」

オレは恐る恐る父さんたちに聞いた。

「24時間以内で80%」

「24時間って・・・それじゃ~今日中にオンナ?」


ブルッ

「あ~ちょっとオレ、オシッコ」

バタン

・・・・

・・・

・・

「ぎゃーーー無いーーー!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る