第2章 愁いの特英士(2)

「どこで戦士たちは消えているのだ?」


 グナン将の言葉は険しく、目がグイダンに向いていた。


「すべて、みずうみの園です」


 しぜん、グイダンが答え、あとの副司令官は同調の意味で頷く立場となる。グナン将の目が、スッと細くなる。


「一度に、なのか?」


 当然総司令官の知るところだが、しかし敢えて訊く。


「いえ、各数人ずつ、何度かにわたって消えております」


「雑兵か?」


「多くは。しかし、上位の者もおります」


「亡骸は?」


「一体として、見つかっておりません」


 グナン将の立腹するであろう返答なので、数瞬のためらいののちにグイダンが答えた。


「残留物は?」


「それもありません」


「血痕は?」


「見当たりません」


「そうか。それでは」


今度、グナン将は3人を均等に見渡した。


「対策を聞こう」


 3人の副将は黙った。ここはなめらかに言葉を吐き出す時ではないと察していた。


「ん、どうした。たいした問題でもないと考えているのか?」


「いえ」


 グイダンが言葉を継いだ。


「大きな問題だと認識しています。大きな問題ゆえ、我々ごときがそう簡単によい考えを浮かぶはずもありません。ただただ困って、黙っているだけなのです」


 グイダンが咄嗟に、場をまとめる言葉を作った。


 グナン将は頷き、大机をうしろに回るとどっかり椅子に座った。


「20の上だぞ。武を専門とするものが、こう次々、武の専門外にやられているのか? だとしたら、これは大きな問題などという生やさしいものではないぞ。事故や失踪だとしたら、何かしらの痕跡があるはずだ。ところが何一つ残っていない。あとかたもないということは、相手があり、きれいに処理されてしまったということだ。もう野放しにはできない。なにかしらの策を、今ここで出せ」


 再び総司令官は立ち上がり、机の前に出て2人を見おろした。そしてここで初めて、口元をゆるめた。


「いっそのこと、みずうみの園をぶっ潰すか?」

 

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