エスカレーターを回さなきゃ!

 娘が3~4才頃、ショッピングモールに連れて行くと必ず行方不明になった。

婦人服に見とれている隙に私の手を離し周りをウロチョロする。

目の端で娘を追いながら洋服を見ていると娘が、ほんの数秒で消える。

でも大丈夫。

娘がどこにいるかは、わかっている。

私は迷わず、エスカレーターに向かう。

すると必ず、娘はエスカレーターのベルトを回している。

別に娘が回している訳じゃないけれど、娘は、嬉しそうに回っているベルトを自分の手で動きに合わせて回している気になっている。

 まるで自分が回すのを止めるとエスカレーターが止まると信じているかのようで、微笑ましい。

 そして、警備員さんに「危ないからだめですよ。」と注意される。

「危ないんだって、もう止めようね。」

「回さなきゃ止まっちゃうよ。」

「大丈夫、止まらないようにできてるから。」

「えぇっ!」

娘には驚きの事実だった。




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