第七幕『処遇』

「さぁて」


 ようやく人魚と対峙をした訳だが、人魚さんお話出来ます?


「おい、こっちの話が分かるかどうか、そっちが話が出来るのかどうかも兎に角置いておくが、人魚さんは俺たちが身柄を預かる事になった」


 ちゃぷり、と水面に浮かび上がって顔を出した人魚が、困った顔をして此方に視線を投げる。


「言葉は分かるな。今から俺たちがお前さんの進退を決定する。アンタに拒否権は無い」


 むっとしかめっ面をした人魚が水からその白い腕を突き出して何かを指差す。何度も同じ方を指差して腕を振るっている姿は、何かを訴えているようだ。


「……言葉は話せないのか」

「どうするんです?ラース」


 どうするったってなぁ。俺の背後にいるマルトとジョンは物珍しげに人魚を見つめている(恐らくどう捌いてやろうかとか考えいるに違いない)。船倉の入り口にもなんだなんだと既に人だかりだ。


「面白いモンがあったもんだねぇ」


 オリガが船倉に降りつつニヤニヤとその唇を歪める。


「人魚はまだ喰った事がないのよねぇ。アンタの所の料理人なら捌けるかしら」

「おう、任せちょけ!」

「ジョン、切り身とか内臓とか、鱗だけでも良いんでこっちにも回して下さいよ」

「人魚の何処の部位が薬になるんやて?」

「色々文献は読みましたが、よく聞くのはやはり心臓とかですね」


 食材を前にして楽しげに歓談する三人を前に、バシャバシャと水を叩くようにして人魚が抗議を始めた。未だ彼女の視線はチラチラと別の所を向いている。それを追った先でしかめっ面のメーヴォと視線が合った。


「あれ?お前作業は?」

「クラーガ隊に任せて来た。何よりこの金切り声じゃ集中出来ない」


 ギロリとその視線が人魚に注がれる。


「少し黙れ」


 そう叱咤したメーヴォを前に、人魚は嬉しそうに破顔した。

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