ゴールデンウィークゲーム

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*本編時系列とは別物としてお読み下さい。




「ゴールデンウィークだよ!」


 たちばな家。居間いまは、午後の陽気ようきに包まれる。

 テレビを見たり、雑誌を読んだりと団らんしているところに、葉介ようすけ意気揚々いきようようと言った。のんびり屋の彼にしては珍しい、テンションの高さ。一花いちかをはじめとする4人は、少し物珍しげに彼を見た。


「葉介さん、よくゴールデンウィークのことご存じでしたね」

「この前くまの屋さんに行ったとき、沖永おきなが君に教えてもらった。嬉しいなぁ、これから毎日、皆家にいるんだよね」


 葉介は、サーカスで稼いだ財産で、悠々自適ゆうゆうじてきなニート生活を送っている。もちろんそれは自分の意志だが、学校や仕事で誰もいない時間を寂しく感じていたらしい。ゴールデンウィークという大型連休を、人一倍待ち望んでいたのは彼だった。


「ねぇどこ行く? 何日もお休みあるなら、遠出もできるよね?」

「僕は仕事だよ」

「俺も」

「えっ」


 千晃ちあき冬陽ふゆはるの返答に、葉介は愕然がくぜんとする。


「ゴールデンウィークでも働くの……? 本当に?」

「俳優業がこよみ通りに休めるはずないでしょ。ハル君は社畜だし」

「そっかぁ……社畜……」

「何だその哀れみの目は」

「辞めたい時はいつでも言ってね……お金ならあるから」

「辞めねぇよ!!」


 項垂うなだれる葉介。その肩を、けいが優しく叩く。


「ゴールデンウィークといっても、連日休める人ばっかりじゃないんだよ。職種によって事情は異なるからね。働いてくれる人には感謝しないと」

「うん……感謝する」

「というわけで、一花いちかはどこに行きたい?」


 蛍は、晴れやかな笑みで問いかけた。


「お前は休みなんだな……蛍」

「ケイ君って僕らを排除はいじょできたときが一番良い笑顔見せるよね」

「身をにして働け。そして全額一花にみつげ」

「たった今感謝とか言った人のセリフ!?」

「あの……私もバイトですよ?」

「!!!!」


 一花が、バイト……? 葉介と蛍は衝撃しょうげきを受ける。


若園わかぞの先輩っていういつもバイトに入ってくれる人が、実家に帰省されるので。地元にいる私が頑張らないと」

「何で皆そんなに働き者なの……信じられない」

「お前が働かなさすぎなんだよ」

「まぁ僕ら大人が休みなしなのは良いとして、一花ちゃんは大変だね。一日もヒマないの?」

「4日はお休みなんですけど、赤崎あかざき先生のレッスンがあって」

「レッスン……」


 音大を目指す一花にとって、それが大事なものであることは、葉介にも何となく分かる。休んで欲しいとは、口が裂けても言えない。落ち込む彼を、千晃がさとす。


「ケイ君とヨウ君、2人で出かけたら? 君たち仲いいんだし」

「ダメだよ……蛍、一花がいる時といない時じゃ、態度とテンションに差がありすぎるから」

「そんなにあからさまかな」

「自覚がないなら録画しててやろうか」

「…………」


 一花は残念がる葉介たちを見て、反省する。店長が困っていたから、つい頼まれるままバイトを入れてしまったけれど、4人の予定を聞いてからにすべきだった。


「5日と7日は15時までなので、そのあとなら遊べます。遠くに行くのは難しいけど、電車で行ける範囲なら大丈夫です」

「あ、7日なら僕オフだよ」

「俺もその日は何とか休める」

「じゃあ7日、皆で――」

「2手に分かれようか」


 葉介の言葉をさえぎって、千晃は言った。


「2手? 何で?」

「バランスがいいからだよ。5日はケイ君とヨウ君、7日はハル君と僕が一花ちゃんと遊ぶ」

「5日は蛍と俺、7日は全員でいいと思うなぁ」

「それは何か不公平だろ」


 冬陽も、千晃の案に乗る。


「別にそれでもいいけど。ちゃんと千晃を制御せいぎょしろよ、冬陽。念のため首輪でもつけていけ」

「酷い言い草だな……。ほら、ハル君。親友を犬扱いされてるよ、抗議して!」

「よし。ヴァフの首輪とリードを借りるか」

「借りないよ!」


 大人たちの不毛ふもう応酬おうしゅうが始まる。こうなると、簡単には収まらない。しばらくして、葉介が何かをひらめいた。


「そうだ! ねぇ、勝負しようよ」

「勝負?」

「どっちのチームが一花を楽しませられるかきそうんだよ」

「しょ、勝負って、そんなことしなくても――」

「お、いいな。それ」

「何をける?」

「そうだなぁ……」


 何だか妙なことになってしまった。

 ただのお出かけなんだから、楽しむだけで十分なのに……。困惑こんわくする一花をよそに、話はどんどん進む。途中から作戦会議と言って、2組はどこかに行ってしまった。

 こういう時だけはぴったり一致いっちする、大人たち。あきれるけれど、微笑ほほえましくもある。


 戸惑とまどいも、予測不可能よそくふかのうも、スパイスの一つ。

 いつもと違うゴールデンウィークのはじまり。


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葉介ようすけけいルート→5/5

冬陽ふゆはる千晃ちあきルート→5/7

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