第7話 エンターブレインゲームコンテストに応募

 ゲームコンテストの締め切り間際の6月はちょうど仕事の合間で時間が取れたので、コンテスト応募のための最後の追い込み作業を頑張って続けた。

だが月末に急ぎの仕事が入ってしまったので少し早めに2001年の6月19日に書留でできあがった小説自動生成ソフトをエンターブレインゲームコンテストの事務局に送った。

郵便局からの帰り道は、ようやくこれで12年もかかったソフトの作成に一区切り付いたと自分でも納得できた。

家に戻ってから念のためにインターネットで検索をかけて、似たようなアイデアのソフトがないか調べてみた。

もし私の作ったソフトより出来のいいソフトがすでにあるのなら私の12年間の苦労は全部無駄だったことになる。

最初に有名なオンラインソフトのサイトを調べてみた。

ジャンル分けしてあるゲームのリストの一覧を調べたりしてみた。

ビジュアルノベルというのはいろいろあったが、絵が出ないという小説はあまり見あたらなかった。

文章の自動生成ソフトとしてマルコフ過程を用いた物はあるにはあったが、マルコフ過程を使った文章の自動生成はそもそも意味がない文章しか生成できない。

数理言語学の教科書にも紹介してあり別に目新しい手法ではない。

私の作った小説自動生成ソフトとは原理的に違うので比較するまでもなかった。

大手のサイトも一通りみてみたが、やはり小説の自動生成というのは見当たらなかった。

これで少しは安心したが、同人ソフトのサイトにはもうあるかもしれない。

同人ソフトのサイトを片端から探してみたがどこにも小説の自動生成はない。

とはいっても、ビジュアルノベルと称するソフトはどこのサイトにもたくさんあった。

絵が出たり音がしたり、それがどうやらコンピューター時代のオンライン小説の未来像というのが定着していて、文字だけのソフトというのは最初からだれも作ろうという発想はないようだった。

しかし絵が出たほうがいいに決まっているので、絵が出ないのがソフトの長所とは言えそうにない。

ほかのソフトは絵が出る分だけ私のソフトよりできがいいソフトということなのかもしれないと思った。

いずれにせよ審査員が審査することなので、応募した以上はあとは運を天に任すしかない。

小説の自動生成ソフトがすでにあるかどうかは、もっと早めに調べておくべきだったのだと思う。

だが自分の作ったソフトよりもっと優れたものがもう出来ているのを見つけるのが怖くてずっと調べるのは先延ばしにしていたのだ。

もし小説の自動生成ソフトですぐれたソフトがもうすでにインターネットで公開されていたとしても、生成される小説のシナリオが良ければ私のソフトの方が出来が良いと主張できると思っていた。

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