010 町への旅と素材売り
ちなみに村のお店にお砂糖はないとのこと。
チダルマが四つん這いになって落ち込んでいた。
チーズはあった。
山羊を飼っているので、それでいいならと売ってくれた。
ついでにお菓子ももらった。
小麦を水で溶いて焼いただけのものに干した果物の実を巻くという、簡単なものだ。
けれども素朴な味わいは、かみさまを喜ばせた。
果実は干すと甘みが増すので、余計に美味しさを感じる。
チダルマはかみさまの様子をじいっと観察して、自らも頑張ると拳を振るっていた。拳、かどうか、ちょっと分からない手ではあったが。
村長の離れ家でエラスエルがまた、こんな高価な宝石はいただけませんと言い出してきたので困ったが、シルフィエルが宥めてくれてようやく収まった。
生真面目な老爺である。
反対に騎士達は、何かお手伝いしましょうか! と、見るからに分かりやすい態度だ。
かみさまがじとっとした目で見ていたら、カガヤキが実体化させて、騎士達の前に陣取った。
「え?」
「な、なんすか」
「光ってる?」
「怒ってるのかな」
「ていうか、これ、本当に妖精……か?」
ぼそぼそ喋る彼等の前で、カガヤキがみょんと手を出し、更に体の中から鉱石を取り出した。
「「「「「おおっ!!」」」」」
5つ並べて、それからまた、仕舞う。
「ええーっ、そんなあ!!」
また取り出して並べ、それをまた仕舞う。
暫くそんなやり取りをしていたので、他のむにゅ達も面白がって見ていた。
可哀想だったので途中で止めさせたが、騎士達も懲りたのか、余計なことは言わなくなった。
そしてシルフィエルとダスティにはしっかり怒られていた。
ずっと傍観していたダスティも、騎士達の様子に呆れていたようだ。部署は違えど、同じ国へ仕える者として恥ずかしいと、最後には情けなさそうに言っていた。
もう少し大きな町まで一緒に行くことになった。
かみさまが調味料を欲しがっていることを知り、それならば良い町があると案内してくれると言うのだ。
それならば同行も有り難い。
むにゅ達も騎士をからかうのが楽しくなったのか、反対はないようだった。
また
移動の間はダスティと騎士達の誰かが持ち回りで食事を作ってくれる。
シルフィエルは全く料理ができないと、嬉しそうに自慢? していた。
エラスエルは不甲斐ない弟子で、とかみさまに頭を下げたが、女性であっても料理ができないというのは大いにあることだ。あれはセンスの問題だから、しようがない。
そして、チダルマはセンスを努力でもって磨く眷属だった。
村にたった一泊しただけなのに、女性陣の料理を見て盗んできたらしい。
格段にできることが増えていた。
今まで切る・焼くしかなかったのに、蒸すとか煮るができるのだ。
たまに違和感なく、ダスティと料理談義をしていた。
喋れないのにどうやって。
身振り手振りでだ。
後ろ姿を見ていると、どうにもおかしくてしようがないが、まあ通じているのならそれでいい。
かみさまはひっそりとチダルマを応援した。
他のむにゅ達も旅の間にちょろちょろと役立ってくれた。
あまり大っぴらに能力を見せてはいけないが、妖精の力のうちだったら大丈夫だろう。
ダイフクは食事の前に皆の手を綺麗にしたり、軽い傷なら治していた。
クロポンは気配察知で、危険な獣がいないか見張り役だ。
カビタンは美味しい水を飲ませてくれ、オジサンは食べられる山菜を採ってきてくれた。
ヒヨプーは簡単な竈を作ったり、野営の時の地均しを担当する。
カガヤキは、各々の騎士達からこっそり鉱石を探しに行かないかと誘われていたけれど全て断り、灯りに徹していた。
やがて町へ辿り着いた。
入るのに身分証明が必要らしいのに、あっさり通れてしまった。
かみさまの威光、ではなくて、
むにゅ達はちょっと尊敬の眼差しでエラスエルを褒め称えていた。
言葉は通じないので、踊りで。
あと、他の誰にもその踊りは見えていないがエラスエルには視えるようになったので、幸せそうに小さいのを見て微笑んでいた。
かろうじて、シルフィエルもどんな様子かは分かるらしく、実体化してぇ! と身悶えていた。
この町では宿を借りることになった。
また、ここからも物資は運んでいたとかで、町長がわざわざ宿まで挨拶に来ていた。
かみさまも「人間の召喚士」として紹介してもらい、目を丸くしたままの町長に調味料が欲しいと頼んでみた。
シルフィエルにせっつかれて我に返った町長は、各店に連絡を入れておくので明日には整っているはずと請け負ってくれた。
今度もエラスエルがお小遣いを渡そうとしてきたが、これはきちんと断る。
もうお金の使い方は覚えたのだ。
今度は、物々交換、あるいは何かを売ってお金を得ることをやってみたい。
そう言うとエラスエルはとても残念そうな顔をして、さようでございますかと眉を下げた。しょんぼりしないでほしい。
かみさまはダイフクに慰めてやってと念話で頼みつつ、告げる。
「お仕事をして対価を得るのもいいかと思うの」
「えっ」
「お仕事されるんですか?」
「無理じゃありません?」
「ていうか、子供……」
「おつかい、だったら、あるいは」
騎士達が失礼なことを言うので、かみさまはチロリと見やって、かるーく睨んでおいた。
カビタンがスーッと飛んでいき、やるならいつでもやりますぜ、といったワクワク感を伝えてくるので、それは止めた。
「とりあえず、薬草とか、鉱石を売ってみる!」
「あ、はい。そうですね。では、そうしてみましょう」
エラスエルは躊躇いつつもかみさまの意見を大事にしてくれた。
というわけで、まずはお金を得ようと出かけることになった。
一番簡単なのはギルドと呼ばれるところで売却することらしい。
ただ、手数料が引かれてしまう。
ギルド会員になっていれば、依頼の兼ね合いもあるが手数料は少なくお得だとか。
「ギルド会員って、ええと、冒険者?」
「ええ、そういうことですが、何故そんなに嬉しそうなのですか」
思わず目がキラキラ輝いていたようだ。かみさまもまだまだである。
「えーと、なんとなく?」
「そ、そうですか。ただ、ギルド会員への登録は10歳からとなりまして、ゼロ様では少しご無理があるかと思うのです」
「あっ」
そうだった。
むにゅ達が部屋の床に四つん這いになっている。最近、芸達者過ぎる気もするが、まあいい。それより、かみさまは自分の見た目を忘れていた。
小さい今の姿も可愛いが、人間の中で生きていくには都合が悪い。
ううむ。
かみさまの力で大きくなっちゃう?
とはいえ、今は人目もある。
神力もそうそうは使えない。こんなところで使っちゃったら、どんなことになるか想像もつかないし。
ということで大きくなる案は却下。
かみさまは諦めて、ギルド以外の場所で売ることにした。
行ったのは治療院と、宝石屋。
幸いにしてエラスエルと共にいたことなどから快く買い取ってもらった。
ちなみに素材を取り出す時はリュックの中にオジサン、カガヤキに入ってもらい、そこで中身を取り出すという形を取った。
オジサンは治療院が現在欲しいという薬草だけをちゃんと取り出してくれた。
困ったのはカガヤキで、次から次へと溜め込んだ鉱石を取り出すので、宝石屋の人に目を剥かれてしまった。
どうやらいっぱいお金の元になるものを持っていると、自慢したかったらしい。
おやめなさいと注意して、ようやく止まった。
どちらでもなかなかの高額になり、かみさまは一日にして小金持ちになってしまったのだった。
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