詩集 憧憬

湿原工房

序にかえて

01.星座の詩

与えられた土地を壊滅させる

支配から離れ

人のまえで

はじめて生きはじめる土地

あらゆる連結のバリエーション

(多様性)

あらゆるバリエーションの連結

(多重露光)

死者さえ生きる

名づけを拒否する土地は

まだら模様の肥沃

あらゆる可能なイメージが

あぶくとして

沸沸と

粟立っている

夜になれば

天体の星を繋ぎ合わせてデタラメに

でたらめな星座をつくり 名づける僕と

指を繰って星を繋ぎ合わせてデタラメに

でたらめな星座を名付ける君

君の顔で千変万化の表情の傘は一斉にひらいて

ずっと遠くの素顔を隠している

天体図鑑を持ちだし

ほんとうの名を紙面を目に映し

喉に鳴らして発音してみるふたりにはもう

「ほんとう」はわからない

声は夜闇にまぎれ

紙面から夜空に

もう一度視線を移しまた

でたらめに星を繋ぐ作業をはじめる

背後で燃える天体図鑑の煙は立って

中空の只中でほどけつづけている

でたらめな星座をくちずさむふたりの喉から

図鑑にあった星座名も均質に結ばれ

またでたらめに結んだ星の名にほどかれる

それもすぐまた次々の星座名にほどけつづけをつづけるふたりは

いつまでも新しい夜に座っていられる

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