再開

 僕は彼女に謝ることができない。

 枝を踏む音が懐かしく僕の耳に響く。

 5分ほど歩くと、小屋が姿を見せた。

 ひっそりと佇むその姿は、七年前と何ら変わらず、僕を迎えた。

 大きな壁のような小屋に重い足を近づけていく。入り口の木製の引き戸には、見覚えのない落書きが施されていた。

 日曜の朝に流れる戦隊もののキャラクターだろうか。粗雑なイラストに苦笑して、引き戸を開ける。

 中は、随分と変わっていた。

 当時は放棄されて随分と経っていたせいか荒れた内装だったが、談笑するくらいしか利用していなかったからさほど気にならなかった

 。

 いまの持ち主はよほど綺麗好きなのか。埃も漂わない空間で、テーブルもイスも整えられ、戸のキャラクターのようなフィギュアがテーブルの中央に置かれている。

 周りには相変わらず、錆びたドライバーやレンチなどの工具が詰められた箱が積み上げられている。

 テーブルの端に沿うように指を這わせて、周りを歩く。この九年は早かった。結局、心にぽっかりと空いた穴を埋めることはできなかった。

 戸が勢いよく閉まる音が、部屋に響いた。

 いまの持ち主が帰って来たのか、僕は戸の方へと振り返った。

「やっと、僕に会いに来てくれたね。晴之」

 あの頃より少し高くなったのか。それでもわかるほど空の声は僕の耳に残っていた。

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