第4話告げられた真実

「なんでいるの?ここら辺は結界魔術で封鎖したはずなのに…」

私はこの少女に何か懐かしいものを感じていた。

「あなたは…いったい…」

それが私の発した一言だった。

「ん??ふふっ、秘密だよ」

「それより、早くここから離れて。まだ来るかもしれないから」

ここは素直に従うしかないみたいだ。

「分かった…気をつけてね」

「ふふっ、ありがとね」

私はみんなのいる所まで走っていった。


「…良かったのか?助けを求めなくて」

僕にそう言ってきたのは同じ部隊の高山和人だった。

「まだそんな時じゃないからね。それに…」

「それに?」

僕は一瞬ためらってから言った。

「…にはあんまり関わって欲しくないから…」

「そうか…ならいい。ただし〈歌姫〉、無理はするなよ」

「ふふっ、全く〈守護〉いや、和人さんは心配性なんだから」

僕はわざと少し茶化した感じで言った。

「心配だけで済めばいいけどな…」

和人の顔は晴れないままだった。


「はぁ…散々な一日だった…」

結局あの後先生には怒られてしまった。

「ごめんね、瑠花ちゃん。僕のせいで…」

「ん?あぁ、気にしないで。私が突っ走った事だから」

さくらは申し訳なさそうな顔をして

「そっか…ありがとね」

私達はそれっきり眠りについた。


草木も眠る丑三つ時、私は物音で目が覚めた。

「おかしいな…こんな時間にさくらが起きてるはずないのに…」

そう思い、さくらの部屋を覗いてみると…

そこには誰もいなく、ただ窓が空いているだけだった。


「さくら、どこに行ったんだよ…!」

私はひたすら夜の街を駆け巡った。

すると、裏通りの一角に謎の集団を見つけた。

私は反射的に身を隠すと彼らの話に耳を傾けた。

「……は……ここを…る。そこ……を…す」

よく聞こえないからもう少しだけ近くに寄ってみた。

それが間違いだった。

私は運悪く、足元に落ちていた空き缶に気付かず蹴ってしまった。

「誰だっ!」

「ひゃっ!」

しかし、逃げてもあの人数差に勝てるはずは無く、私は追い詰められてしまった。

「全く…残念だったな。我々の話さえ聞かなければまだ生きていられたのに」

そう言うと、男は私に向けて手をかざしてきた。

「【ライトニングショッ…】」

男の魔術が完成するより早く、私の前にが舞い降りてきた。

そして、相手が魔術を打つより早くその男の命を刈り取った。

「なっ…!」

そして彼女は、一瞬で彼らに肉薄した。

肉を切り、骨を断つ音が聞こえてくる。

「クソッ!【バーニングブレイク】!」

迫り来る業火を涼しげに受け流し、

「【ライトニングスパーク】!」

雷閃の奔流を氷壁で防ぎ、

「【ダークオブコール】!」

闇の中から現れた異形の怪物を氷鎌で無慈悲に切り捨てながら進む彼女は、まるで死神のようだった。

「【ブレイズボム】!」

最後の一人が放った爆破系魔術に突っ込むように彼女は相手へと向かって行った。

「危ないっ!」

咄嗟とっさに叫んだ私を嘲るように爆炎は無慈悲に彼女を飲み込んだ。

刹那、晴れる爆炎。紅く咲く血桜。

彼女はこちらへ振り向き、返り血に濡れたその顔を向けてきた。その少女の顔を見た瞬間、私は言葉を失った。

なぜなら…

「…なんで…なんで、さくらが…」

そう、少女の正体はさくらだった。

「あー、バレちゃったか…。瑠花ちゃん、騙しててごめんね?」

さくらはそう言うと、通信魔術を使って誰かと話を始めた。

「こちら〈歌姫〉ですよー。え?それはいいから報告しろって?あー、敵は全滅させましたよ。一つだけ報告しなきゃいけない事が…作戦中にルームメイトに正体バレちゃいました。え?その子を連れてこいって?本部まで?えー、本部遠いんですけど…はいはーい、分かりましたよー」

もしかして、守秘のために殺されるとか?

嫌な想像が頭の中をよぎった。

「瑠花ちゃん、ちょっとついてきてくれる?大丈夫、死にはしないからさ」

「…分かったよ」

「じゃあ、行こうか。あーあ、転移の魔法陣組むの面倒なんだけどなぁ…」

そう言うとさくらはブツブツ文句を言いながら、転移の魔法陣を組み立て始めた。


さくらの転移魔法陣で連れてこられたのは何重にも結界が貼ってある苔むしたお屋敷の様なところだった。

「さ、入ろう?大丈夫だよ、そんなに緊張しなくても」

そう言われ、何重にも張り巡らされた結界を解除し中に入ると…

そこは、とても近未来的な空間だった。

外見とは全くちがう構造。

外から見たらせいぜい二階建てぐらいだと思っていたが、吹き抜けになっている階だけでも二十階ぐらいの高さはあった。

「ここで待ってて、先に報告してくるから」

そう言って、さくらは行ってしまった。

私がソファーに座って待っていると

「見たことない顔だがここになぜいるんだ?」

明らかに怖そうな人に絡まれた。私がどうしようか迷っていると、

「あ、たいちょーお疲れ様でーす」

「ん、やぁ〈歌姫〉お疲れ。この子は君がが連れてきたのか?」

そんなことを話しているさくらと隊長さん

ん?歌姫って…

「そうですよー、いやーうっかり見られちゃって…」

「そうか…無事だといいな」

無事ってどういう…

「もちろん、そのつもりですよ。いざとなったら戦争でも何でもするつもりで守りますから」

「ふっ…少し見てみたい気がするよ、君と軍上層部の戦争ケンカが。もちろん、その時は傍観させて貰うがね」

隊長さんはそんなことを言って去っていった。

「じゃあ、行こうか瑠花ちゃん。死神の手を払いに」

さくらはそう言うと、私を連れて上層階へ向かった。

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