第2話 忍び寄る脅威

結局あの後、雲は綺麗に消え去ってしまっていた。

「何だったんだろーね、あの雲」

「宇宙人のメッセージとか?」

真剣な顔で言うさくら。

「有り得ない」

私は即答で否定した。

「なんでー?有り得るかもよ?」

「幽霊はいても宇宙人なんていないんだよ」

「うーん…不思議だねー」

「そう言えば、さくらは専攻科目どれをとるの?」

「…なにそれ?そんなのあったの?」

「やっぱり忘れてんだね…。はぁ、えっとね、学院の二年生は一つ専攻科目を取ることになってるんだよ」

「へぇー、それでそれで?」

「その専攻科目は〈魔導工学〉、〈白魔導学〉、〈黒魔導学〉、〈召喚学〉、〈魔導学〉の五つの中から選ぶんだよ」

補足しておくと〈魔導工学〉は魔力を使った機械の制作や錬金術、〈白魔導学〉は回復魔術ヒールスペル補助魔術サポートスペルについて、〈黒魔導学〉は攻撃魔術アサルトスペルとか戦闘の基礎、〈召喚学〉が召喚術とか死霊術ネクロマンスを学べて、〈魔導学〉が…なんだかよく分からないものだ。

「んー、その中なら〈魔導学〉かな」

「意外だね、さくらなら〈黒魔導学〉取ると思ったんだけど」

「んー、まぁ正直何でもいいからね。瑠花ちゃんは?」

「私は…やっぱり〈白魔導学〉かな」

「まぁ、お互い頑張ろーね」

私達は帰路についたのだった。


翌朝 私はいつも通り起き、さくらを起こしにいった。

「さくらー、時間だよー」

しかし…

「あれ?さくらー、どこ行ったんだ?」

ベットの上には誰もいなかった。

「おーい!さくらー!どこ行ったの?」

すると…

「ただいまー、瑠花ちゃん帰ったよー」

さくらがひょっこり玄関から入ってきた。

「さくら!どこ行ってたの?」

「うーん…お散歩いってたー。ごめんね、心配かけて」

「全く…まぁいいや、それより早く食べなよ」

「うん、ありがとー」

そしていつも通り学校へ行った。

確か今日の授業は魔術戦の実技だった気がする。

「ほら、さくら行くよ。間に合わないから」

「分かったー、今行くー」

今日は1日中実技をやるのだ。まぁ、さくらはいつも通り眠そうだが。

「ほらー、初めは個人競技をやるぞー。」

担任の指示の元、実技の授業が始まった。

「今日のトーナメントはこれだー。よく見ておくように」

私はさくらと一緒に見に行った。

「えーっと…あ、私はBブロックだ。さくらは?」

「僕はAだよ。決勝で会おうね?」

「はは、絶対だよ?」

「瑠花ちゃんこそ、勝ち残ってよね」

そして、個人競技が始まった。

「一試合目、柏木対松本」

「お手柔らかにね」

「こちらこそ、よろしくお願いしますよ」

「では、はじめっ!」

「【ショックスピア】!」

これは魔術師なら誰でも憶えられる…いわゆる基本魔術の一つだ。

「【アイシクルシールド】」

それを防いだ氷の盾は特性魔術と言って、その魔術に対しての特性があれば使える魔術だ。

ちなみにさくらの魔術特性は氷。

「【アイシクルレイン】」

大量の氷の礫が松本を襲う。

「わわっ、ちょっ、まっ…【シールド】」

バリーン

松本の張った防御魔術はガラスの割れるような音とともに砕かれた。

「そこまで!柏木の勝ち!」

さくらはホッとしたような表情をしていた。

「次!舘風対松田」

よりによってなんでこいつとなんだ。

私は心底嫌そうな顔をしながらフィールドへ行った。

「あらあら、瑠花さんどうしましたの?そんな顔して。いつものお顔が台無しですわよ?」

「うるさいよ、顔だけはやらないであげるから」

「あらあら、やれるならやってみてくださいまし」

「なら、遠慮なく行くよ」

先手をとったのは松田の方だった。

「【ブラストウェイブ】ですわ!」

強風が私を襲うが、

「【バニッシュ】!」

打ち消しの魔術…これも基本魔術の一つだ。

「今度はこっちからっと…【オーバードライブ】!」

これでじぶんの筋力を大幅に上げた。

そして、私は一瞬で松田の前まで進んだ。

相当手加減して腹に一撃を加えた。

「そこまで!舘風の勝ち!」

ふぅ、まずは1勝。

その後も私とさくらは勝ち続け、とうとう決勝戦になった。

「じゃあ、決勝戦は柏木対舘風なんだが…すまん、明日に持ち越しでいいか?」

「なにかあったんですか?」

「そうだよー、なにかあったの?」

「いや、緊急で招集があってな。生徒達はもう解散だそうだ。そういう訳で各自帰宅するように」

「何なんだろーね、なにかあったのかな?」

「昨日の雲も気になるしね」

「まぁ、なにかあったら明日伝えてくるよね」

「そうだね」


月が頭の上を通過し、闇が街を包む夜中に

「くっ、何なんだアイツは!」

魔術師礼服に身をつつんだ一団は焦燥に駆られていた。

彼らは、ある人物に追われていた。

「なぜ、計画が露見したんだ!」

「しかも相手はアイツだぞ!」

組織の中で忌み嫌われ、恐れられているそんな人物が彼らを亡きものにするためにやってきたのだ。

「くそっ!やつはどこにいるんだ!」

「見つかったらおしまいだぞ!」

「それは残念だったね。もうおしまいだよ」

その瞬間、背筋が凍くような悪寒が彼らを襲った。。

「!い、いつの間に!」

「やつを殺せ!さもないと俺らが」

「【アイシクルサイス】」

ズバッ

肉の断ち切れる音。

「くそっ!【アトミックサンダー】!」

路地裏に高威力の雷が現れ、フードを被った少女を襲う。

しかし、

「【フローズンシールド】」

氷壁一枚で防がれ、

「第零番【詠唱アリア】」

彼女周辺の魔力密度が高まり、

「【フローズンフィールド】」

彼女の周囲はは一瞬で凍りついた。

「な、なんだこれは!?」

「くっ、移動阻害の魔術か!」

彼女は彼らの攻撃をいなしながら、彼らを斬っていく。

そして、

「ラグナロクは…不滅だ…この世界を作り替えるまで…」

最後の一人が倒された。

彼女の周りには先程まで魔術を行使していた魔術師のが転がっていた。

「今日のお仕事おーわりっと」

月に背を向けて血に濡れた氷の鎌を持ちながらそんなことを呟く彼女はまさしく死神だった。






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