5

ドオオォン‼︎‼︎


一際、大きな爆発音がした。カスミは咄嗟に地面に伏せる。男が居た場所に目を向ける。黒い男は、アスファルトに黒い染みを残して消えていた。

肉片の一つも残さない、自爆。

「オーナーから、連絡は?」

カスミは近づいてきたアズマに、問いかける。

「オモテの傀儡となった者であれば……見ての通りだよ。傀儡に与えられる最大の武器は、自爆装置だ。どんなにやり口の汚いギルドでも、テリトリーはあるし、闇改造体は使わない。そうだろ?」

小さく頷くカスミ。一足遅れて来たミサトは、カスミの側にしゃがみ込み、応急処置を始める。

「カスミの処置が終わったら、ゆっくり帰ろ?オーナーには、アズマが連絡してくれた」

「ありが……と」

照れるような、小さな声で呟くカスミの表情は、傭兵の顔から見た目相応の内気そうな少女の顔に戻っていた。


三人は、ギルドのテリトリー内に入ってすぐの辺りで焚き火をし、夜明かしをする。夜明けまであと三時間ばかりだろう。

「カスミ、傷の具合は?」

ミサトが不安げに問いかける。

「平気……私、遺伝子を少しだけ、弄ってあるから。傷の治り……早い、です」

遠慮がちに小さく笑うカスミ。ミサトは簡単に縫合したカスミの肩口の傷痕を確かめ、胸を撫で下ろしホッと息をつく。

「血は止まってる、カサブタになりかけてるね……問題は、脇腹の傷よ。夜明けまでに少し塞がれば良いのだけれど……」

「少し、眠れば……治り、ます」

「そう……一応、これを敷いて、横になって眠って?朝になったら起こすから。アズマもだけど、怪我人はなるべく安静に」

ばさり、と、ミサトは自らの羽織を脱いで地面に広げ、カスミに横になるよう促す。

「……」

「寝袋や毛布なんて上等なものは無いけど、羽織一枚でもあった方がマシでしょ?カスミは良い子だから、寝なさいね?」

柔らかく、重くならない口調のミサトにカスミは戸惑いを覚えながらも、羽織の上に横になり、ゆっくりと瞼を閉じた。


やがて空は白くなり、うすらぼんやりした朝の光に辺りが包まれる。火の番をしていたミサトは、焚き火を消して、眠っている二人に優しく声をかける。

「そろそろ起きて?朝になったわ。帰りましょう」

アズマとカスミは、ゆっくりと身体を起こし、立ち上がり軽く埃を払う。カスミは下に敷いていた羽織をバサバサと振って、埃を払ってからミサトに返す。

「ありが、と……もう、痛くは無い」

「それじゃ、出発ね?」

三人が、帰路につこうとして直ぐの事だった。旧居住区の中でも、一際古びた建物の前で声をかけられる。

「あ、あの……お兄ちゃん、お姉ちゃん……」

ふと目線を向ければ、一匹の猫を抱きしめた、白いワンピース姿の少女の姿があった。

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