親方、北嶋

 あの依頼から六日後。

 ネロ教皇は約束通り、労働力としてヴァチカンの戦士30人、北嶋さんの家に呼んだ。

 意味が解らない命令だろうが、教皇直々の命令、戸惑いながらも戦士達が裏山にて北嶋さんの到着を待っていた。

「ほら、北嶋さん、早く早く!!」

 不機嫌極まりない、憮然なる面持ちの北嶋さんの手を引っ張り、騎士達の待つ裏山に向かう。

「あーつまんねー!!ああー面白くねー!!」

 ブチブチうるさい北嶋さんを、半ば無理やり裏山に連れて行く。

 まあ、気持ちは解るけど…

 亜空間解除した後、直ぐに婚約指輪を買いに出掛けようとした北嶋さん。

 だが、裏山改造計画の為に、婚約指輪の購入は後回しになり、設計事務所に無理を言って、直ぐ様図面を起こして貰ったり、材料費のお金を捻出したりと、忙しくなったのだ。

「なんで婚約指輪を後回しにして、ムサい男共と資材買いに行ったりしなきゃならないんだよ!!」

 北嶋さんには葛西とレオノア・クルックス、そしてアーサー・クランクを連れて、資材を買いに借りたトラックで走らせた。

 葛西が言うには、北嶋さんは落胆を通り越して半泣きしながら段取りをしていたらしい。

 少し可哀想に思ったりもしたが、工事が優先。

 私は北嶋さんの度重なる抗議と要望を却下して段取りを進めた。

「テメェの家の事だろうが!!俺なんか関係無ぇのに付き合わされてんだぞ!!」

 北嶋さんよりも可哀想なのが葛西だ。

 漸く労働から解放されると思った矢先に葛西の携帯が鳴る。

 発信主は、ソフィアさんだ。

『キョウ、神崎さんから聞いたけど、もう暫くアチラのお手伝いをしなきゃならないわね』

「はあ?なんで俺が北嶋ん家の工事の手伝いしなきゃなんねぇんだよ?それに俺にも仕事があるだろうが?」

『お友達のお仕事を手伝うなんて、キョウはなんて素敵な人なの!私もっとあなたの事を好きになっちゃったわ!』

「だから俺はダチじゃねぇし、手伝う義理なんざ無ぇんだよ!!」

『頑張ってねキョウ!大丈夫、キョウなら出来る!じゃあね!』

 

 ガチャッ!!………ツーッ、ツーッ、ツーッ、ツーッ………


「おいソフィア!おい!…畜生神崎!テメェ何を吹き込んだんだ!!」

 葛西の言う通り、ソフィアさんにお願いして暫く葛西を借りる事にしたのは私だ。

 ソフィアさんは心良く応じてくれた。

 松尾先生もゲラゲラ笑いながら「存分にコキ使ってやってくれ」と言っていた。お二人共、ヴァチカンとコネクションを持つ事の重要性と必要性を感じたからこその御返事だ。

 それは今後の葛西にとって、大きなプラスになるからだ。

 レオノア・クルックスとアーサー・クランクは、不機嫌極まりない北嶋さんの指示に従い、遊歩道の整備を進める。

「これはなかなか…重労働だな…」

 慣れない仕事を懸命に頑張るレオノア。他の騎士達が到着するまで、少しでも仕事を覚えておきたいそうた。

「これはどうやって使うんだ?」

 アーサーはツルハシを持ちながら首を傾げている。

「これは振り下ろして土を掘り返すんだよ」

 葛西が実際にやって見せて、初めてどうやるのかが解るようだ。

「すまないな、俺はガキの時から剣を握る事しか考えた事が無いんだ」

 本当に申し訳なさそうに語るアーサー。

「俺だってツルハシ使う事なんか、考えた事も無ぇよ…あの馬鹿に関わっちまったおかげで、散々だぜ…」

 道具の使い方をアーサーに教えながら愚痴を零す葛西。

 葛西も最初、北嶋さんに道具の使い方を教えて貰っていた。

 何だかんだ言って、飲み込みが早い。

 因みにリチャード・ディは、教皇に連れられてヴァチカンに強制送還された。

 最後の最後まで、北嶋さんや葛西を異教徒、蛮族と罵っていた。

 彼は恐らく、この先も変わる事は無いだろう。

 ある意味彼も古いヴァチカンの犠牲者だ。

 レオノアが言うには、彼程に極端に頑なに教えを全うしている者は少ないらしい。

 彼の暴言に、頭を下げて申し訳なさそうにしながらレオノアが教えてくれたのだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ヴァチカンの戦士達30人に緊張が走る。

 目の前に不機嫌そうに現れた日本人の出現によって。

 彼がサン・ジェルマン伯爵を倒したのだ!

 彼が三種の神器の所有者なのだ!

 彼がヴァチカン最強の騎士を、悪魔堕ちから救ったのだ!

 尊敬と畏怖を以て北嶋を見る騎士達。

 父からどのように聞かされて、此処に来たのかは知らないが、きっと過酷な訓練を想像しているだろう。

 まぁ、過酷には違いないが。

 北嶋を真ん中に、右に葛西、神崎、左に俺、レオノアが並ぶ。

 そしてレオノアが一歩前に出る。

「諸君、よく来てくれた。君達はこれから、ヴァチカンの騎士の名に恥じぬよう、仕事をしなければならない」

 三銃士と呼ばれたレオノアの挨拶に、更に緊張を増す騎士達。

 神崎に促されて、北嶋が一歩前に出る。

 騎士達を睨み付ける北嶋。ピリピリした空気が、裏山に蔓延する。

「お前等全員俺の指示に従わなきゃ死ぬぞ!!」

 怒号にも似た北嶋の叫びに、騎士達は緊張感を押さえ切れずに、膝を震えさせた。

「いいか、暑い中の作業は熱中症をわずらう!こまめな休憩と水分摂取だ!!」

 騎士達の震えがピタッと止まる。気にせずに北嶋は続ける。

「解らないなら勝手に進めるな!暑苦しい葛西とバカチン騎士共、こいつ等に聞け!俺の代理でもあるからな!!」

 どよめく騎士達。勿論、北嶋は気にせず続ける。

「こいつ等三人に10人づつ付け!今から作業服と道具を配る!」

 作業服?道具?と、互いに顔を見て首を捻る騎士達。

 俺とレオノア、葛西は、それぞれの前に10人づつ並ばせ、一人づつ前に来させて作業服と道具を渡す。

「これは安全靴?」

「スコップじゃないかコレ?」

「手袋…軍手と言うヤツか?」

 最早緊張など無くなり、ざわめく騎士達。

「お前等今日から俺の事を親方と呼べぇ!!!」

 目を見開いて喝を入れるように叫ぶ北嶋。

「親方の命令は絶対だ!解ったなお前等!!」

 騎士達は何が何やら解らない儘、ただ頷くしか無かった。


 俺達はバケツやブラシを持ち、それぞれの持ち場へ移動した。

 俺は松、竹林。レオノアは果樹園(?)。葛西は池だ。

「アーサー、我々は一体何をするんだ?」

 騎士の一人が不安気に訊ねてくる。

「先ずは掃除だ。さぁ、バケツに水を汲んで!」

 途中まで通している水道から水をバケツに入れる。そして、結構長い遊歩道を先に進んだ。

「さぁ、ここだ。北嶋の守護神の一柱、地の王の社だ」

 社に着いた騎士達がどよめいた。

「我等ヴァチカンの騎士達に異教の偶像を洗えと言うのか!」

「我等はカトリックだぞアーサー!!」

 一斉に抗議する騎士達を余所に、俺は地の王に挨拶をする。

「掃除に来たよ。今日は少しばかり人数が多いから、楽だよ」

――ふん、貴様のやる気と相反し、連れて来た人間共は、俺の神体を洗う事を拒んでいるようだがな?

「大丈夫、北嶋の命令だからね。オヤカタ命令は絶対。そうだろうみんな?」

 笑いながら促す俺。

 一瞬、戦士達は戸惑ったが、オヤカタ命令、北嶋の命令には従う事を父から言われていたようで、渋々ながらブラシを取った。

 神体を掃除した後、俺に割り当てられた工場区画に道具を持ってみんなで移動する。

「ここに砂利を敷いて、ローラーで固めるんだ」

 葛西が水道を通す工事を先行して行い、俺が砂利(砕石と言うらしい)を敷き、レオノアが手摺りを付けるコンクリートの基礎石を設置して行く。

 なかなか面倒だが、出来上がるのを見て行くと、何だか面白い。

「砂利道を作ると言うのか?訓練じゃないのか?」

「訓練じゃないよ。俺達は北嶋の労働力だ」

 皆、無言で道具を地面に置いた。

「私達は騎士だぞ!何故こんな真似をしなければならない!」

「北嶋の凄さは噂で聞いている!我等は北嶋に訓練を受ける為に来た!少なくとも、工事をしに日本に来た訳ではない!」

 そう言って、来た道を引き返そうとする騎士達。

「帰るのなら、この先真っ直ぐ行った所にある、小さな山に行ってみろ」

 俺の言う通りに遊歩道の先の小さな山に向かう。

 その直ぐ後、レオノアのグループの騎士達も山に向かう。

 葛西の方も同じようだ。

「みんなアレを見たら驚いて戻ってくるな」

 俺は笑う。騎士達が神妙な顔になり、それぞれの持ち場に戻って来る事を想像して。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 騎士達は憤慨しながら、それぞれの代理人が言った山へ向かった。

 向かう途中、皆怒りを口々にする。

「教皇は一体何を考えているんだ!」

「お前等などまだマシだ!俺の隊など、あの鬼が憑いている男だぞ!」

「何故聖騎士たる我等が、異教の、しかも邪神の徒に使われなければならない!」

 レオノア、アーサーの班よりも、葛西の班の戦士が一番憤慨していた。

 無理も無い。異国の異教徒と戦う事はあっても、使われる事など考えた事も無いだろうから。

「む、あれがレオノアが言っていた小山か!」

 騎士達が目にしたのは、死と再生の神が鎮座する丘より多少高い山。

 山と言うよりは工事等で発生した土を盛り上げた感じだ。遊歩道もここを通るらしい。

 重機と思しき機械音が聞こえ、砂利を敷くように土が平らに均されている。

 騎士達は、重機の音が聞こえる先に向かった。

 そこで信じられない物を見て固まる。

 重機を動かしているのは、北嶋、親方だ。

 それの手伝い、重機が出来ない細かい手作業を行っている一人の老人に驚いたのだ。

 それはヴァチカンを統べる男、ネロ教皇だったのだから!!

「おい爺さん!そこ少し高いだろ!スコップで削ってくれよ!」

 教皇に向かって大声を張り上げて指示を出す北嶋。

「私にはみんな同じように見えるんだがな」

 ネロ教皇は屈んで水平を見る。

「爺さんがしゃがんでいる場所だ!あーもう!ちょっとどけ!」

 北嶋に言われて焦るように退く教皇。

 北嶋はバックホゥと言う重機で、その高い箇所を削る。

「バケットに出た土を入れてくれ爺さん」

 北嶋が削った土を、慌てながらスコップで掬い、バケットと呼ばれるアームの先に付いているショベルに入れる教皇。

 重機を旋回させ、発生土を山に付ける北嶋。

「爺さん、ちゃんと働けよ!働かざる者食うべからずだぞ!」

「すまんすまん。だが私は素人だ。もう少し優しく指導してくれないか?」

「甘えるな爺さん!自分で志願したんだろ!しかも一番楽な、俺の手元に居るんだ!四の五の言わずに頑張れ!」

 北嶋に叱られてシュンとする教皇を見た騎士達は、何も言わず、何も言えずに踵を返し、それぞれの持ち場へと帰った……


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 漸く昼飯だ。

 北嶋の庭に仮設したプレハブに騎士達を連れてくる。

 アーサーや葛西の班も到着した。

「イマイチ捗らないな」

 ぼやくアーサーに同意して頷いた。

「俺の所もだが、まぁ初日だ。こんなもんだろ」

 葛西の班もあまり捗っていないようだな。

 実は俺の班も、予定の半分程しか進んでいない。

 騎士達は慣れない仕事に悪戦苦闘だし、何よりやる気が無いからだ。

 教皇自ら使われているのを見たから、仕方無しに自分達も作業をしているに過ぎない。

「おーお前等、飯食え」

 北嶋と神崎が大きな鍋とサラダ、それにご飯を盛った皿をプレハブに用意していた。

「カレーか。まぁ、仕方無ぇか。大人数だしな」

 皿を取り、鍋からカレーソースをご飯にかける葛西。付け合わせのサラダも皿に乗せる。

「なんだこの昼食は?聖騎士の我等にワンプレートだと?」

「ヴァチカンでは栄養をちゃんと摂れるよう、沢山の料理を個別の皿に入れると言うのに!!」

 一斉に不平不満を口にする騎士達。

「ゴチャゴチャ言うな!経費削減だ!つか、俺の女が作ったモンに文句があるのか!!」

 北嶋の怒号。対して騎士達が一斉に北嶋を睨み付ける。そんな中、葛西は我関せずでモリモリ食べていた。

「貴様、我等は奴隷じゃないんだぞ!」

 騎士の一人が北嶋に詰め寄る。すると、九尾狐が北嶋の前に出て来て唸った。

「ち、魔物まで飼いやがって…」

 そう言いながら、後退りする騎士。九尾狐と戦う程、愚かでは無いか。

「どうした君達?早く食べないと無くなるぞ?」

 教皇が発し、それに反応して騎士達はそちらに目を向けた。

 教皇は葛西の隣で、やはりカレーをモリモリと食べていた。

「き、教皇!こんな庶民の物を口にせずとも!」

「何を言っている?旨いじゃないか。どれ、少しおかわりを…」

 教皇が自ら、皿にご飯を装い、カレーソースをかける。

「大変だ!全部無くなる前に食べなくては!」

 慌ててアーサーも席に付く。

 それを唖然としながら見ている騎士達。余程信じられないいのだろうな。

「俺も三日前に、神崎のカレーをご馳走になったが、これは旨いぞ!その時はポークだったが、今日のはチキンか!」

 俺も席に付いてカレーソースをかけた。

 神崎のカレーは本当に美味しいのだが、騎士達は眉間にシワを刻んで、我々の食事を見ているだけだった。

 午後は、予想通り、全く仕事が進まなかった。

 騎士達は昼食を食べていない。直ぐにバテて、木陰で横になったり、水ばかり飲んだりしていたからだ。

「なんだお前等!やる気あんのか!」

 流石に怒った北嶋。

「まぁまぁ、今日は初日だし、まだ日本の食べ物に慣れていないから、大目に見てくれ」

 俺は北嶋を宥める。確かに食事は仕方がない事なので、渋々ながらも納得して溜飲を下げた。

「まぁ、確かに仕方無いかもしれんから今日は大目に見てやるが…お前等、作業服洗って乾かしとけ。終わったら風呂に行くぞ」

 そう言って、プレハブの片隅にある洗濯機に指を差す。

「まさか…自分達で洗濯しろと言うのか!!」

「当たり前だろうが!自分等の物だろ!見ろ、爺さんを!」

 洗濯機に目を向けると、教皇はちゃっかりと一番に洗濯機を使っていた。

「風呂上がりでも構わねぇだろ。よし、俺の班は先に風呂行くか」

 葛西は騎士達を促して着替えを持たせた。

「風呂って…どこにある?」

 騎士の一人が質問をする。このプレハブに風呂に該当する設備が無いので、当然の疑問だったのだろう。

「銭湯だよ。お前等も話には聞いた事あるだろう?」

 銭湯と聞いて、少し興味が湧く騎士達は、葛西の後に続いて歩き出す。

「我々も風呂の後にするか」

「そうだな。スッキリしてから洗濯するか」

 俺とアーサーの班も、結局は銭湯を先にした。

 騎士達は、その決定に異論は無く、寧ろ喜びながら、俺達の後に続いた。

 銭湯に入った俺達の姿と数を見た先の客が、何故か逃げるよう、湯船から出た。

「銭湯にはマナーがあってな。先に身体を洗ってから湯船に浸かるんだ」

 葛西の指示に従う騎士達。異国のマナーはやはり守らねばならない。

 そして騎士達は珍しそうに、銭湯の中を見たり、サウナに入ったり、身体を洗って入浴したりしていた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 注意を受け止めて身体を洗ってから湯船に入るヴァチカン共に満足して、俺も身体を洗い、湯船に入る。

「広い風呂だな!壁に描かれている絵はフジヤマか?」

 頷く俺。

 何故銭湯の壁には富士山が描かれているのだろう?そう思いながらゆっくり浸かる。

「しかしオヤカタは我々の事を全く考えていない!」

「教皇も教皇だ!オヤカタに思うが儘使われているとは、一体何をお考えなんだ!」

 口々に北嶋への不満をぶちまける。

「…お前等、労働組合って知っているか?」

 ヴァチカン共は首を横に振り、何だそれは?と聞いてくる。

「要は労働条件に不満な者が集まり、それを改善するよう直訴したり、要求を飲まなければストライキを起こしたりする組織だ」

 へ~っと頷く。俺はニヤッとしながら続けた。

「俺が代表で北嶋に不満を言ってやる。全ての要求を飲まないならば、ストライキ起こしてボイコットするってのはどうだ?」

 ヴァチカン共はともかく、俺が北嶋の裏山で仕事をする意味が全く解らない。

 一人ではストライキを起こしても効果は無いが、ほぼ全員ならばどうだ?

 あの馬鹿の性格からして、要求を飲む事は無いだろう。

 それに乗じて、あんな仕事からおさらばって寸法だ。

「それは良い!俺は食事をもっと良い物にするよう、要求するぞ!」

「休憩には水じゃなく、何か味の付いた飲み物が欲しいな!」

「洗濯は誰か雇ってやって貰うようにしてもらおう!」

 碌に仕事も出来ないで、自分勝手な要求をする。それを北嶋は絶対に飲む事は無い。あの馬鹿はそれなりに筋が通っているからな…

 俺は含み笑いをしながら立ち上がる。

「よし!お前等の要望を全て叶えて貰おうぜ!!お前等、今から俺を組合長と呼べ!!」

 銭湯中、ウオオオオオオ!と騎士達の叫び声が木霊する。

 全て俺の思い通りに進んだ…

 こんな所と、こんなに早くおさらばできるとは…

 俺は声に出さないように笑った!!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「う~ん、カレーかなり余っちゃったからなぁ」

 お鍋にたっぷりの、お昼のカレーを見ながら思案する。

 外国人の彼等にカレーライスは未知の領域だったのか、と。

 教皇達は、美味しい美味しいといっぱい食べていたけど…

 もっと彼等の口に合う物を考えなきゃならないけど、安くて栄養が取れて、一度に大量に作れる物となれば、カレーが一番なんだけどなぁ…

 いっその事、お金を渡して好きな物食べて貰うとか?

 でも、それじゃ経費削減にはならないしな~…

 うーん、困った困った困った困った…


 ブロロロロロロ…


 ん?車の排気音?誰か来たのかな?


 ピンポ~ン


 やっぱり誰か来たんだ。

 玄関に出向き、ドアを開けた。

「はい、どちら様でしょうか…って!」

「助っ人に来ました」

 驚いた私にニッコリ笑いながら会釈をする女の人。

「ありがとう、凄い助かる!」

 手を取り、握った。彼女も握り返してくれる。

 もの凄い心強い助っ人が来てくれた。

 頼もしく感じ、本当に嬉しかった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 プレハブでマッタリとしている最中、バカチンの連中が銭湯から帰って来たようだ。何やら機嫌良く、ガヤガヤ騒いでいる。

「おう、北嶋!少し話がある!」

 んん~っ?と葛西を見ると、葛西の後ろにはバカチン騎士が俺を睨み付けながら、列をなしていた。

「なんだ暑苦しい葛西?バカチン共と一緒に、この親方に文句でも言おうと思ってんのか?」

 ギクッとした空気と共に、バカチン共は一斉に顔を伏せた。

「大丈夫だお前等!!組合長の後ろにしっかり付いとけば問題無ぇ!!」

「組合長?また面白い役職に着いたな。で、組合長様が親方の俺に話とは、何か直訴か?」

 暑苦しい葛西は得意そうな顔をして、俺の目の前に出てくる。

「親方ぁ!!俺達労働者はなぁ、この現場に不満タラタラなんだよ!!今から言う要求を、全て飲まなきゃ、俺達労働組合はストライキを決行する!!」

 ドヤ顔で交渉を持ち掛ける暑苦しい葛西。

 つか労働組合って!!

 バカチン共の不満を上手く利用して組織を作ったのか!!

 俺は無表情達に目を向けた。

「無表情、モヒカン、お前等も組合員か?」

 奴等も組合員なら、俺の代わりに現場の面倒を見る奴が居なくなってしまう。それは非常に困るのだ。

 タダでさえ、爺さんしか手元に居なくてキツいって言うのに。

「いや、俺はオヤカタに付くよ。クミアイチョウではオヤカタに勝てないだろう」

 お?無表情は俺側か。

「俺もオヤカタ側だな。何てったって、オヤカタはヴァチカンの長を使う程偉いからな!」

 おおっ!班長二人、俺側か!!

 じゃあ要求は全て却下で問題無いな。バカチン共は、いざとなれば、力付くで仕事させてやるわ!!

 まぁ、俺も話が解らん男じゃない。話はちゃんと聞いてやるが。

「じゃ、要求を言え」

 俺は暑苦しい葛西に促した。

 暑苦しい葛西は暑苦しく笑いながら頷く。

「一つ!!休憩時には水では無く、ジュースとかコーヒーとかを支給する事!!」

 はぁ?水じゃなくジュース?

「はぁぁぁぁ~っ…」

 呆れて溜め息を付いた。

「お前等馬鹿だなぁ…ジュースとか飲んじゃうと、逆に喉渇いてしまうだろが。水が一番いいんだ。熱中症対策には塩も必要だな。だから要求は却下だ」

 ザワザワするバカチン共。水が一番いいと言う理屈は、バカチン共も理解したらしく、黙って頷く奴もいる。

「ハッ!!早速却下かよ!!まぁいい、次!洗濯は誰か雇ってやらせる事!!」

「それはお前等が自腹でクリーニングに出すんなら構わんぞ。だから却下だな」

 元々経費削減の為にバカチン共を労働力としている。なるべく金をかけないようにするのは当たり前だ。

 自腹ならと聞いて、また頷くバカチンもいた。金は持っているんだな。

 面倒な洗濯よりも、クリーニングに出して煩わしさを回避、それでも構わない奴等はホッとしているようだ。

「流石だぜ親方!!こちらの要望を悉く退けるとはなぁ!!」

「組合長よー。お前ちゃんと考えてから発言しないとよー、恥かくのはお前だぞ?」

 バカチン共にカッコ付けた手前、それなりの成果を出さなきゃ誰も従わなくなる。

 そうなりゃ現場は上手く回らない。

 結果、自分が一番泣きを見る事になる。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 ハッ!正に計算通りの展開だ!

 やはり北嶋は要求を飲む事は無い!

 後は一つくらい、適当な要求をして却下させ、それを口実にストライキ決行だ!

 ヴァチカン共がスト起こしている最中、俺は素知らぬ顔で北嶋ん家からおさらば…

 いける!!絶対にいける!!

「北嶋ぁ…テメェが俺達労働者に対して、福利厚生を全く考えていないって事が良く解ったぜ!!だがな、次の要求は必ず叶えて貰う!!」

 バーン!と北嶋に指差す。背景に雷光のエフェクトも忘れずにだ。

「福利厚生はちゃんと考えているだろーが。銭湯代も俺が払ってんだからな」

「うるせぇ!!いいか北嶋、最後の要求だ!!飯はちゃんとヴァチカンの連中の口に合う物を用意する事!!現に昼飯のカレーも食えなかったんだ!!体調管理も儘ならねぇ!!これは絶対に通して貰うぞ!!」

 一気に捲し立てる。

 これは北嶋の馬鹿を多少でもイラッとさせ、考える暇を与えずに却下させる戦法だ。

 さぁ北嶋!!却下しやがれ!!

「それはいいよ。手伝いに来た人がいるから」

「ハッハッハ!!これも却下か!!!舐めるなよ北嶋って、何だとっっっ!?」

 思わず聞き返す。

 北嶋が要求を飲んだ!?しかも手伝いまで雇った!?

 俺は耳を疑い、首を振った。

「何悶えてんだよ?だから飯の件は了解したってば。親切な人だな~。わざわざ助っ人に来てくれたなんてさぁ~」

 北嶋が普通に感謝しているだと!?

 つまり雇ったんじゃない、ボランティアか!!

 しかしこれでは、俺の目論見がオジャンじゃねえかよ。

 難癖付けてストライキ起こすか…それしか道は無いか?

「ハッ!飯炊きを頼んだのかよ?だがな、神崎のカレーでも口にすら入れなかった連中だぜ?日本の飯が駄目なんだよ!ヴァチカンとまでは言わねぇが、ヨーロッパの普通家庭料理くらいは作れねぇと駄目だな!!」

 かなり強引だが、何とか持ち直したか?若干焦りながら北嶋の返事を待つ。

「それは大丈夫だ。つか、お前には絶対口に合う。合わなきゃ非常に困る事になるからな」

 何か訳解んねぇ事を口走っているぞこの馬鹿は?

 もしかしたら、北嶋の方が焦ってんのか?

 ならばたたみ掛ける!!

「どこの馬の骨か解んねぇ奴の飯なんざ、口に合う訳ねぇだろ!!馬鹿かテメェ!!」

 さぁ北嶋!俺の暴言に逆上して飯の要求を却下しやがれ!

 期待する俺に、北嶋がゆっくりと俺に向かって指を差した。

「なんだ?俺に指差しやがって?逆ギレでもするか?」

 クックッと笑う。ストライキまであと僅かな所まで来ているから嬉しいのだ。

「お前が言う飯炊きは、お前の後ろに居る人だ」

 あん?俺の後ろだ?

 言われて振り向く。

 ……………

 俺は後ろに居る奴を見て固まった。

 北嶋が言う事は正しかった。俺の口に合わなきゃ色々マズい奴が手伝いに来たんだ…!!

 ヤベェ…膝がガクガク震えるぜ…単純な恐怖で!!

「キョウ…飯炊きって何?どこの馬の骨?誰に何を言ったか理解しているの?」

 美しいブロンドが怒りによって逆立っているような錯覚に陥る。

 助っ人とはソフィアの事だった!!

 成程、ソフィアならヴァチカンの連中の口に合う物を作れるだろう。否、俺の口に合わなきゃいけねえ。主に俺の方が歩み寄らなきゃいけねえ。

 だが俺は納得する前に、やらなきゃならねぇ事があった。

 俺は腰を退き、微かに後退り、デカい声で言った。

「すまんソフィア!まさかお前が来るなんて思わねぇだろう?成程、俺の口に最高に合う飯を作る助っ人な訳だ!!いやー、まさか北嶋ん家にボランティアに来るとは、流石俺の女!!料理の腕だけじゃねぇ、人間としても最高だぜお前はっっっ!!!」

 両手をバタつかせ、高速で頷きながら、俺は謝罪と機嫌取りをほぼ同時に行う。

 そんな俺を見て、ソフィアはニッコリと笑う。

「いいのよキョウ。それよりも、ヴァチカンの人達と随分仲良くなったじゃない?」

 サーッと周りを見るソフィア。なんか嬉しそうだ。

「そりゃ俺は組合長だからな」

 ソフィアは瞬時に組合長とは何だ?と言う顔を作る。

「北嶋に要求を言う、代表みたいなモンさ」

 言い終えたと同時に、目を輝かせて俺の手を握った。

「凄いわキョウ!!ヴァチカンの人達の代表だなんて!!」

 嬉しそうな顔になるソフィア。この顔に俺は弱い。誰だってテメェの女の嬉しそうな顔のは弱いだろ?俺だって例に漏れる事はねえ。

「まぁな。ヴァチカンの連中は、半ば無理やりに此処に来た訳だからな。俺が矢面に立ってやらなきゃならねぇ」

 またまた嬉しそうな顔になるソフィア。

「じゃ、じゃあね!北嶋さんが要求を飲まなきゃ、どんな事をするの?」

「そりゃ話し合い有り気さ。まぁ、北嶋の馬鹿は滅多な事じゃ要求は飲まねぇが。そうなりゃストライキさ。北嶋もストライキ起こされたら困るだろう?」

 ウンウン頷くソフィア。

 俺は調子に乗って、どんどん喋っていく。

「ストライキ起こしてよ、北嶋とヴァチカン共がギャンギャンやっている最中、俺はバックレて家に帰るっつぅ作戦だったんだよ。頭いいだろ俺は?大体北嶋ん家の現場なんざ知ったこっちゃねえしな!!苦労すんのは北嶋だけで充分だろ!!バックれた後に大笑いしてやるつもりだった…う…」

 ギリ…

 俺の手を握っているソフィアの握力が増す。

「あ、あのよ…」

 ギリギリ…!!

 徐々に増す握力!!こりゃヤベェ!!失言つうか余計なことまで喋っちまった!!

 慌てた俺は、助けを求めようと周りを見る。

「う!!」

 先程までクミアイチョー、クミアイチョーと持ち上げていたヴァチカン共の目が冷ややかになっている。

「き、北嶋!!」

 北嶋に助けを求めようと振り返る。

「なんだお前、バカチン達を利用して逃げようとしていたのか」

 やはり余計な事を口走ったようだ。

 再びソフィアの方を見る。

 ソフィアの目が、これ以上吊り上がる事が無い程吊り上がっていた。かなり怒ってやがる…!!

 俺は握られた手を強引に振り払い、床に両膝を着いた。

「姑息な真似を企んですまーん!!」

 俺はソフィアに、土下座で許しを乞うた…


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 俺は…生まれて初めて他人がする、土下座と言う物を見た…

 惚れた女に対する自分の愚かさを謝罪するおとこの土下座!

 あまりの美しい土下座に感動する。

「葛西、俺は今…感動して何も言えない…」

 素直に言葉にするも、葛西は床に額を付けたまま、微動だにしない。

 なんて美しい…美しい土下座だ……!!

 あまりの美しさに写メを撮る。


 カシャッ!


 だが、葛西はやはり微動だにしない。

 俺の写メを羨ましく思ったか、バカチン達はデジカメやスマホで葛西の土下座を撮る。


 カシャッ!

 カシャッ!

 カシャッ!

 カシャッ!


 バカチン達は、何故か満足した表情をしていた。

「…早く顔上げないと、本当に別れる事になるわよ…」

 パツキンが、何故か恥ずかしそうに葛西に顔を上げるよう促す。

 葛西は黙って顔を上げた。

 葛西の額は、床に擦り付けた後が、赤くうっすらと現れていた。

 それにしても、見事な土下座だった。

 俺は惜しみない拍手を贈る。

 それに呼応するように、バカチン達も葛西に拍手を贈った。

「貴重なワンシーンを見れた訳だが、パツキンが来たって事は、晩飯ができた、って事だな」

 パツキンはパンと手を叩く。

「そうそう、だから皆さん、料理運ぶの手伝って下さいね~」

 俺はバカチン達を促した。

 昼飯を食っていないバカチン達は率先して料理をプレハブに運ぶ。

 メニューはニンニクとオリーブオイルで炒めたスパゲティ、すね肉をトマトソースで煮込んだヤツとか、あと、サラダはオリーブオイルをかけたヤツとか。

「オリーブオイルとトマトまみれだな」

「大丈夫です。オリーブオイルとトマトは彼等には欠かせない大事な食材ですから」

 成程、食文化だな。

 俺達日本人に醤油とか欠かせないのと一緒か。

 パツキンの言う通り、バカチン達は旨い旨いとモリモリ食っている。

 因みに俺と暑苦しい葛西は昼に残ったカレーだ。

「何故俺はカレーなんだ?」

「俺一人で消費しきれないからだろ。お前は組合長だから、バカチン達の希望を叶えた分、お前にはしわ寄せが行く。役員とはそういうもんだ」

 屁理屈にも似た俺の言い分だが、暑苦しい葛西は口答えを一切せずに、カレーを食った。

 余程さっきの土下座のダメージが大きかったのだろう。

 まぁ、可哀想だが自業自得なので致し方ない。

「そういや暑苦しい葛西、お前ん所のポメラニアンと薄汚い爺さんも来ているぞ」

「ソフィアはまだ、日本の交通事情に詳しく無ぇ。ジジィが連れて来るのは当たり前だ」

 葛西がテンション低めで答える。

 仕方無いので世間話を続行する俺。

「パツキンの飯はバカチン達には好評のようだな」

「ガイジンだからなソフィアは」

 やはりテンション低めで答える葛西。しかし、そう言っても北欧と地中海じゃねーか。食い物が違うだろ。

 まあ、パツキンのレパートリーにバカチンが食えるものがあったからいいって事だが。

 しかし、ホントこいつテンション低いな。そんなに辛かったのか。

 優しい俺はフォローしてやる。

「それにしても美しい土下座だったな」

 バン!とテーブルを叩きながら立ち上がる暑苦しい葛西。

「うるせえ!!元々はテメェが業者に頼まずに素人共を使って仕事したからじゃねぇか!!この馬鹿野郎が!!最初からソロモンの指輪を使えば、あんな真似しなくて良かったんだよ!!」

 ソロモンの指輪?あの指輪が何の関係がある?

「指輪がどーした暑苦しい葛西?」

 暑苦しい葛西は俺をギロッと睨み付けながら言った。

「ソロモン王はソロモンの指輪で悪魔を使役して城を完成させただろうが!!テメェも指輪で悪魔を使役して、工事やらせりゃ、金も時間も掛からねぇだろうが!!」

 俺は暑苦しい葛西に向かって思いっ切り叫んだ。

「それを早く言えこの野郎!!!」

 俺と暑苦しい葛西は、バカチン達が引く位、激しく罵り合う事になった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「何やらプレハブが騒がしいのぅ」

 ワシとネロは庭に椅子とテーブルを出して、呑んでいた。

「賑やかでいいじゃないか。それにしても、久しぶりだな松尾。連絡は取り合ってはいたが、会うのは……」

 ネロは機嫌良く、ワシが持参した日本酒をチビチビと呑んでいる。

「君代ちゃんの家で、ナーガを封印して以来じゃからな」

 ナーガ討伐は結果失敗じゃった。封印が限界じゃったからな。

「あの時の戦いは、当時名が通っていた霊能者が約30人だったか…生き残った9人で辛うじて封印したんだったな…」

 ナーガの力は巨大じゃった。ワシと互角、それ以上と思しき霊能者が約20人、ナーガによって殺された。

 弱らせるだけが限界じゃった。箱に閉じ込めるだけが精一杯じゃった。

「それを北嶋君は、話によれば圧倒的に倒した。いや、倒したんじゃなく、救った。信じられなかったが、アーサーを助けた彼を見て、それが真実だと確信したがね」

 やはり嬉しそうに語るネロ。

「やけにご機嫌じゃな?」

 ワシの質問に、笑いながらプレハブの片隅に指を差して答える。

 指の先には、洗濯物が風に揺られていた。

「見ろ松尾。あの洗濯は私が自分でしたんだよ」

 まだまだ嬉しそうに語る。

「それだけじゃない。あの遊歩道の下地は、私が北嶋君と一緒に作ったんだ。下手くそで、北嶋君に叱られながらね」

「ヴァチカンの教皇を全く躊躇ためらわずに普通に使いよるな、あのガキは…」

 呆れを通り越して驚嘆さえ覚える。

「そう。私はヴァチカンの頂点だ。洗濯なんか、専用の者が行うし、誰も私を叱る者はいないんだよ」

 特別扱いされずに接されたのが、そんなに嬉しかったのか。

「お主も不便な身よな」

 組織の頂点に立つ者には自由など無い。北嶋のガキの家に来るのでさえ、相当苦労したに違いない。

「カレーも旨かったんだよ」

「解った解った。良かったなネロ」

 ネロは返事をする代わりに笑った。

 奴は奴なりに、いや、思った以上に楽しいんじゃろう。

「よし、ならばワシも明日から手伝おうかの!!」

「北嶋オヤカタは厳しいぞ?君に務まるかね?」

 今度はワシが笑って返す。

「なんの、お主よりはマシに働けるわい」

 久しき友と明日から働く。

 ワシも何だか嬉しくなってきた。

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