読み終わってしまうせつなさ

良い物語は、いつまでもその世界に浸っていたくなるような魅力があります。私にとっては本作がそうでした。

主人公は、死んだ人間(霊)の声が聞こえ、その能力をみずからに憑依させて使うことができる。そのことが彼を、物語の中心、つまりゼスペリア州の領主となるはずだった女性と、その妹のもとに導きます。そこからはじまる物語はまさにバトルあり、陰謀あり、ばっちばちのラブあり。描写は臨場感がありつつも丁寧で、読者が置いていきぼりになることがありません。

まわりの女性がみんな男性主人公を好きになってしまうという、いわゆるハーレム要素もありますが、まっすぐに頑張る主人公を応援する姉のような気持ちで受け止められます。ヒロインも、ヒーローも、あるいは悪役や脇役ですらも、それぞれの役割を精いっぱいに果たしきろうとする気概があり、それが読者に伝わってくるのではないでしょうか。

悩み、戦い抜いたからこそ得られる結末のカタルシスを、ぜひ一緒に体感してください。

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