第20話

葉野君は離婚に向けて奥さんと弁護士と話し合いを重ねていると言う。

私はただ見守るだけ。それしかできないのはもどかしいが仕方ない。



『だいぶ話し合いできてきたよ。 向こうも浮気している事を出されたから、 あんまり色々言えなかった』


『そう。 でも何て言っていいか……』


『今度子供達に会わせてよ。 これからの事を考えなきゃいけないし』


『え? 子供達に?』


『言っただろう? 一緒に歩いていくって。 まさかやだなんて言わないよな?』


『子供達に話してみるよ』



そうだ。子供達に葉野君の事をきちんと説明しなければ。いきなり新しいお父さんて訳にはいかないけれど、もしかしたらお父さんになるかも知れないし。



つい先程まで葉野君とは一緒になれないって思ったけれど、葉野君はちゃんと考えてくれていた……。


ゆらゆら揺れる私の気持ち、しっかりしろ。




「ねぇ、 新しいお父さん欲しい?」


ある日の休日、子供達に切り出した。


「え⁈ お父さんいるじゃん!」


士雨がガタンとテーブルの椅子から立ち上がった。


「もちろんお父さんはお父さんなんだけどね。 お母さん新しい人と結婚できたらなって……。 あ、 今まで通りあなた達のお父さんには会えるよ」


「何だよそれ……。 二人になるの?」


「まぁそんな感じ? 一緒に暮らす人ができると……」


「菜々お父さんいらなーい。 菜々のお父さん一人だもん」


「そうだよね。 お父さんは一人だよ。 でもね、 お母さんが他の人と結婚すればその人もお父さんにはなるんだよ?」




子供達には理解し難い問題なのだろう。

しかし納得してもらわなくては……。


「ともかく今度会ってみようか」


何とか了解は得た……。


私の再婚は子供の問題もある。クリアするにはこちらも時間がかかる?




『何とか了解得たよ。 いつ頃会おうか』


『うーん。 取り敢えず話し合いが落ち着いてからかな? 向こうがまたごね出したし……』


『こっちは気にしないで。 きちんと話し合いして』



あの奥さんは一筋縄ではいかないのか。

余程別れたくないらしい。


けれど自身の浮気などの証拠を出されたら、応じるしかないようで。

私に何度か諦めてくれと言ってきたけれど、私ももう引き下がらない。


やっと叶いそうなかたおもい。紆余曲折あるが手に届きそうだもの。


元の夫の彼女もまたうるさく色々言ってきたけれど、こちらもフル無視。


確かに子供達の事を考えればと未だに思うけれど……。

しかし申し訳ないけれど、私だって幸せになりたい。


いつもの様に仕事して家に帰って、夕飯の支度をする。当たり前の日常を当たり前に過ごしたい。けれど女としての日常も過ごしたい……。そう思うのは贅沢?

そう考えてはいけないの?


違う。私だってそう生きたい。段々強まる思いが私の心に広がった。


傷付けてしまうかも知れない。色んな人を……。けれど私は私の気持ちに正直に生きたい。


子供達の母としても、一人の女としても……。

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