第27話 久しぶりマリー


翌日の昼、ミレイアはイオルの部屋の前を行ったり来たりしていた。


昨日の自分の態度を思い返し気まづくなり中々部屋の中に入れなかったミレイアだったがようやく覚悟を決めたのか扉をノックした


コンコン


「イオル様起きてください」


シーーーン


当然のように返事はない


コンコン


「イオル様!起きてください!」


シーーーン


先ほどよりも大きな声で呼びかけるがやはり返事はないのでしかたなく部屋の扉を開けて部屋の中へ入るミレイア


部屋に入るとイオルはいつもと変わらずベッドの上で気持ち良さそうに眠っていた。

ミレイアは、自分は昨日の出来事を思い出して中々眠れなかったにも関わらず呑気に寝ているイオルに対して思う所があったが何とか気持ちを殺して声をかける


「イオル様、もうお昼になりますいい加減起きてください」


イオルを揺すりながら声をかけるとようやくイオルが反応を見せた


「うぅ〜ん、もうちょっと…」


一言そう言うと再び眠りにつこうとするイオルだったが


「そんな事を言っていないで起きてください。仕事もあるんですから」


しばらくイオルを揺すっていると流石に眠っていられなくなったイオルが身体を起こした


「ふあぁぁ〜くそうっ、もう少し眠らせてくれよ。昨日はなかなか眠れなかったんだから…」


イオルは、不貞腐れた口調でそう言うとしぶしぶベッドから立ち上がった。


イオルが起きたのにも関わらずミレイアはベッドの側で顔を赤くしていた。


(イオル様、さっき中々眠れなかったって言っていたけどもしかして昨日の事を思い出していたのかしら)


イオルも自分と同じように昨日の事を思い返していたのだと想像すると自然と嬉しいやら恥ずかしいと言った気持ちが込み上げてき固まってしまっていた。


そんなベッドの側で固まっているミレイアを訝しげに思ったイオルが話しかけた


「おい、ミレイアそんな所で固まってどうしたんだ?」


ミレイアは、その言葉を聞いて我に返り慌てて返事をする


「い、いえ特に何もありません。それでは昼食をとりに行きましょか」


冷静を装って先導するように部屋を出て行くミレイア。その後を不思議そうな顔をしたイオルが続いた。




部屋を出て食堂に向かっている2人だったが城の中がいつもより騒がしいような感じがした。

そんな雰囲気を感じつつ食堂についたイオル達だったが丁度そこに居たマリーに話を聞く事にした。


「なあ、マリー何かあったのか?」


そんなイオルの質問を聞いたマリーはこいつは何を言ってるんだと言った顔で話し始めた。


「はぁ…、あんたは何も知らないのね」


呆れた態度だったが話はじめるマリー


「今朝、王城の周りの塀の前に暗殺者らしき奴が気絶していたらしいのよ。」


「へぇ…」


「そんな事があったんですか⁉︎」


話の内容に興味が無さそうなイオルとは対照的に驚いているミレイア。


「何であんたはそんなに反応が薄いのよ…」


「だって別に興味無いし。しかも進入されたわけでもないんだろ?」


昼食を食べながらどうでも良さそうに答えるイオル。そんな態度を見たミレイアは、事の重大さを説明しはじめた。


「イオル様は何でそんなに興味が無さそうなんですか?今回の事件はかなり大変な事ですよ?」


「まあ、そうだけど…。今までも何回もこんな事あったけど進入された事ないじゃん」


確かにグランザム王国の王城は、昔から結界に囲まれており敵対者の進入を許したことはないと言われている。


「その通りだけどあんたは関心が無さすぎるのよ」


「そうですよ」


マリーとミレイアの2人からそう言われるとイオルは大人しく黙った。


「それにしてもここの結界って一体どうなってるのかしらね」


マリーが不思議そうに顎に手を当てながら疑問を口にした


「さあな〜」


それに適当に返事をするイオルと


「私も詳しいことは分かりませんけど大まかな事なら説明できますよ」


結界の話が出来そうで少しうれしそうなミレイア。


「それでは、お願いします。」


ミレイアとマリーはイオルを通じて知り合ったので少しぎこちない。ミレイアは、上司のイオルにタメ口を使っているマリーに対してどう接したらいいのか測りかねており、マリーも貴族の娘であるミレイアとどうやって話したらいいのか掴みかねている様子が続いている。


2人のやり取りを見続けているイオルだったがそんな事になっているとは全く気づいておらず話を聞いていた。


「まず、結界魔法には発動するためにはいくつかの条件を設定する必要があります。」


椅子から立ち上がり人差し指を立てながら話はじめるミレイア


「その条件の内容はいくつ設定しても大丈夫ですが数が多くなると消費する魔力も増えます。あと、条件の内容の重さによっても消費魔力は上下します。そして最後に結界を展開する範囲の大きさによっても消費魔力が変化します。当然大きいほうが消費魔力も多くなり、この王城全体を常に覆い続けているとなるとどれほどの魔力を消費するのか想像もつきません」


その説明をきいたマリーは、いまいちピンとは来なかったようだが王城の結界がとんでもないものだという事は理解していた。


「その結界って誰が維持してるの?」


マリーがその質問をすると


「知らん」


「…私も分かりません」


机に頬杖をつきながら興味なさそうに返すイオルと知りたいのに分からないといった様子のミレイア


「このレベルの結界を維持するためには相当な魔力が必要になりますから魔道具といった可能性は低そうですし直ぐに術者が分かると思ったんですが見つかりませんでした。」


残念そうに呟くミレイアに呆れた声でイオルが言った


「そんな事調べたのかよ。まあ、見つからなかったなら諦めろよ」


昼食も食べ終えゆっくりしたので部屋に帰りたくなってきたのかイオルは話を切り上げようとしたが此処でさらにマリーが質問した


「でも、この結界ってかなり昔からあるんですよね、だったら術者がいる場合亡くなっている可能性もあるんじゃないですか?でないと結界が解けてしまいますし」


今更だがそんな疑問が浮かんだマリーに対してミレイアは


「確かに結界を張った術者が亡くなっている可能性はありますがそれでも今まで結界を維持する方法はあります。」


少しタメをつくり続きを話はじてるミレイア


「結界魔法には、他の魔法と違い術者を変更する事が出来るのです。普通の魔法は発動した本人が使用する物ですが結界魔法は、長時間維持するものもあり1人では魔力が足りなくなる場合もあります。ですので結界魔法は発動した術者本人が他の魔導士に結界の制御権を譲ることが出来るのです。なので結界を張った術者本人でなくとも維持し続けているだけで稀代の天才魔導士である事は明らかなので私は是非あって見たいのです。」


最後は興奮した様子で話し終えたミレイアに若干気圧されたマリーは


「そ、そうなんですね。でもそんなに凄い事をしている人なのに知られていないなんて不思議ですね」


「そうなんですよ、本当にどんな人なのか会ってみたいのに…」


落ち着きを取り戻したミレイアがガッカリした様子でそう言うとそれまで興味なさそうにしていたイオルが


「まあ、そのうち会えるんじゃね?知らんけど…そんじゃあそろそろ部屋に戻るか。じゃあなマリー」


何の根拠もないのにそう言うと軽くマリーに挨拶をしてからイオルは立ち上がり食堂を出て行こうと歩いて行ってしまった。


その様子を見てミレイアも慌てて



「マリーさん、それでは私も失礼します。」


「は、はい。こちらこそ」


マリーに頭を下げるとイオルを追いかけていくミレイア。そんな2人を見送りながらマリーはイオル達の食器の片付けをし始めた。




























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