第9話 出会い

家に入るとシスティさんと同じぐらいの歳の女性が二人迎えてくれた。

やはりシスティさんと同じく東南アジア系の方だ。姉妹かな?

「紹介するねです。左からマリー、リンダ、エミリー、システィとこの家でルームシェアしているです。システィと同じくベビーシッターやホームメイドをしてるよです」

ルームシェアしてる仲間なんだ。

「この家はララの別荘です。それを私たちが借りているのですよ」

システィさんが紹介してくれた。

そっか、ララの別荘なんだ。


「香港には私たち、フィリピン人いっぱいいます。香港はホームメイドやベビーシッターを雇う人間多いです」

「そうなの、多くの人は住み込みで働いているんだですけど、システィたちはホテルを利用する観光客を中心にベビーシッターをしているです」

へぇそうなんだ。そういうシスティさんとララはどうやって友達になったんだろう。


「ララのお父さん、ララのために私雇ったね、それがララとの出会いよ」


「雇った?じゃあララが赤ちゃんの頃からの知り合いなんですか?」「ううん、ベビーシッターと言っても赤ちゃんの面倒を見るだけじゃなくて小学生ぐらいの子どもの面倒もみるよです。わたくしがシスティと出会ったのは五年前です」


「そうよ、ララのベビーシッターのために雇われたのに何故か、ララにベビーシッターのやり方を教える事になったよ」

「だって、折角プロのベビーシッターさんに出会えたよです、教えてもらうチャンスよねです」



「そうやって教えてもらう事によって友達になったの?」

歳も、国籍も違う二人が友達になるって僕が学校で友達を作るよりも難しそうに考えていたけれど、こういう環境で二人っきりだと案外、こっちの方が簡単になのかもしれない。

「うん、ララは積極的だったよ。私たちとプライベートでも仲良くしたがる事に驚いたね」


「システィたちと出会う前は、わたくしの友達はママさんだけでした。同年代の友達はいなかったよです」


お母さんだけが友達だなんて僕みたいだ。

マザコンだと気持ち悪がられようが、僕がたくさん話をして一緒に何かを楽しむのはいつも母さんだったんだ。反抗期や親離れをする前に、強制的に母さんはいなくなってしまったけれど、きっと僕は高校生になってもキモイ奴になりながら、母さんと過ごしていたと思う。


「ララはどうして積極的にシスティさんたちと友達になろうとしたの?」


女の子の方が、お母さんといつまでも仲良くいたっておかしくないだろう。それなのにララは自分から外の世界に飛び出して友達を作ろうとした。


同年代の友達がいないという事は、きっとチャレンジしたけど何らかの失敗をしたとか、合わなかったという事なんだろう。

それなのに、そういう勇気をまた持てるのは凄いなと思うよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る