第10話 ヒミツゴト

 学校


「おいワタルてめぇハナカさんと何してた!」


 教室に入るやいなやショウマが大股で歩いて来る。


「な、何ってなんのことだよ⁉︎」


「先週の放課後!てめぇとハナカさんが内緒話してたのを俺は見逃さなかったぞ!」


 ああ、あの時のことだな?先週末の例の件がすぐに脳裏に浮かぶ。また心臓の鼓動の音量が増していく。


「最後に耳打ちされてたよなぁ?あれなんて聞かれてたんだ?あんな至近距離でぇ。」


「言えるかそんなこと‼︎」


 ハナカさんはもちろん自分のこともかばうために強めに出たのが間違いだった。


「……。おいおい、嘘だろ?もうお前らそこまで行ったのかよ?俺に内緒で。」


 肩を落とすショウマ、とっさに訂正する。


「おい!そう言う意味じゃねえから今の!勘違いすんなよ!」


「本当か?今のはそう言う意味じゃないってことは、まだ付き合ってないと?」


「うん!そう言う意味!だからこれ以上想像を膨らませるな!」


 まったくショウマの想像力の強さには圧巻だ。

 そこで、一昨日ハナカさんから旅行を提案されたことを思い出した。


「そうだショウマも一緒に旅行にいかねぇか?来週の三連休を使って行くつもりなんだが。」


「おお?いいなぁ、ところでメンバーは?」

 俺と俺の妹、それとルピと、お前の愛しのハナカさん。多分もうちょい増えるかもねぇ。」


 と意地悪く笑ってみせた。するとショウマはクウッと唸り、


「情けなんていらねぇぜ……。」


 そう言ってトボトボと席へ戻った。

 俺も席に着くと


「ワタル君。さっきの旅行のお話しもっと詳しく聞かせて?」


 そう聞いてきたのはマキだった。


「あ、聞いてたの?えっと、説明すると、今週末の三連休を使って、ハナカの親戚が経営してる海辺の旅館に泊まりに行こうって話が出てて、もしよかったらマキも行く?」


「行きたいです!是非ご一緒させていただきたいです!」


「オッケー!そんじゃあハナカさんにも伝えておくから。」


「ありがとうございます!」


 と無垢な笑顔見せる。その裏でとんでもない計画が企てられているとは知らずに……。



 放課後


 俺はマキも一緒に行きたいと言っていることを報告しにハナカさんの席に向かっていると、


「ハナカちゃん!」


 ルピに手を引かれてミサが駆け着く。


「ミサも一緒に旅行行きたいって言ってたっすよ!」


「ちょっ。私は別に好き好んで行くわけじゃないからっ。どんなものか気になったから付いて行こうかなぁって……。」


 そこで俺が口を挟む。


「あー、いいからいいから。そこで俺の方でもマキ行きたいって。」


 そう言うとハナカさんは指で丸を作り、


「オッケオッケー!みんなで行った方が楽しいもんね!それに料金取らないって行ってくれてるし。」


「え⁉︎そうなんすか?ハナカさんの親戚さん太っ腹っすねえ‼︎」



 家


「コノミー、お前の近くでは誰か一緒に旅行に行きたいって人いた?」


「ううん。いなかった。そもそもその話ししてないの。」


「あっ料金のことについてはまったく気にしなくていいって。」


 コノミのことだからまた申し訳ないと思っていることを考えて教えたつもりだが


「そう言うつもりじゃないの。私以外の年下の娘がいると、その……、おにーちゃんと……。」


 そこまで聞いて大体言いたいことが把握できた。


「そそそ、そうかそうか。それならいいよ。コノミの好きにすれば。それじゃあ俺、風呂入ってくるから。」


「あっ、ぅん。」



 PM 8:16


 風呂から上がり、リビング戻る。


「ふーっ上がったよー。っあれ?誰もいないか。」


 風呂から上がったことを告げようとコノミに告げようと、コノミの部屋へ向かう。

 ドアの前に立つと、なにやら中から声が聞こえる。小さく、蚊が飛ぶような声で、


「ふーっ♡ んっ♡ あっ……♡」


 おいおいおいおい。これはいわゆる

『それのその』と言うやつか?妹もお年頃かと思いつつ、手はなぜかドアノブへと伸びていた。だめだと思いつつもゆっくりとドアを開けていく。

 板一枚取っ払っただけで格段に音が大きくなる。

 コノミは、右手をズボンの上からそれを撫でるように動かし、左手で何かの布を持っている。なんだ?あの布は。紺色で、大きな穴が3つある。


「はぁぁ、おにーちゃんの匂い。ダイスキな。すごく、ひゃう♡」


 分かってしまった。あの布は今さっきまで自分が着用していた下着。いわゆるパンツだ。そういえばさっき入浴中にガチャって音が……。


「ああっ♡もうっだっめ!あああぁぁぁ♡

 ダイスキっ!おにーちゃんダイスキぃっ♡」


 最後まで見入ってしまった。あんなに可愛いコノミが、こんなことをしているのを見てしまって。どうしようもなくなってしまった。

 見ることに集中し過ぎて前に体重をかけ過ぎていることに気がつかなかった。


 ドーン‼︎


 未だにぼーっとしながら未だ少し手を動かしているコノミの顔が、みるみるうちに赤くなっていくのが見て捕らえられた。

 と思うと、突然コノミが泣き出してしまった


「あ、あのー、なんつーか。ご!ごめんなさいぃ‼︎」

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