第6話 当事者、空気は読まない。



「ふぅーッ。やっと行ったか」



 日も暮れて辺りが暗くなって来た事もあり、私は広場で火を起こし焚き火を囲っていった。


 戦闘中は気が付かなかったが、今回私が相手をする冒険者は全部で13人だったらしい。


 先程まで私の動向を隠れながら観察していた冒険者ヤツがその13人目だ。



「あッ! 暇やし、追いかけてみよッ♪」



 『思いついたが吉日』



 私は、すぐに焚き火以外の物を収納して冒険者の後を追った。




 ***




「それ以上近づくなッ!」



 冒険者たちの寝床に到着した私は、その場にいる全員から白い目で睨まれている。



「えー、けちやなー」


「そういう問題じゃないんだ」



 私が膨れて文句を言っても、リーダーであるサンディスイケメンはこれ以上来るなと警告して来る。


 仕方なく私はその場でエール樽を出し、一人で飲み始めた。



「君は何の為にここに来たんだい?」


「だ・か・らッ! 一緒に飲もって言ってるやんッ!」



 私が不貞腐ふてくされながら、エールを煽っているとサンディスイケメンは大きな溜息を吐いた。



「恐らく君は、本当に只僕らと飲みに来たんだろうね」


「だから、そーやって言ってるやんッ」


「けど、僕らは敵同士なんだ。わかってくれるかい?」



 私が返事をせずにエールを飲んでいると、サンディスイケメンはある提案を私に持ちかけた。



「もし君が降伏するなら、一緒に飲めるけどね」


「んな、ことする訳ないやろッ」



 私の当たり前の返事にサンディスイケメンは爽やかに笑っていた。



「それは残念だ。でも、いつでも降伏してくれていいんだよ?」


「なんでやねん。どう考えても、負けとったんそっちやん」


「明日はそうならないように善処するよ」



 再びサンディスイケメンは爽やかに笑った。


 その対応に私は少々苛立ちを感じ始めた。



「何んかしらけてきたから帰るわ」



 私がそう述べると、サンディスイケメンの後ろで女剣士つりめが私を追い払うように手を払っていた。



 やっぱあのアマ、ムカつくな……



 私は広げた物を収納し、立ち上がった。



「コレ返しとくわッ」



 サンディスイケメンに投げたのは、昼の戦闘ケンカサムライのおっちゃんから奪った刀だ。



「あとコレもなッ」



 再び投げ渡した皮袋に入っていたのは、先日のお釣りだった。


 それから私は何も言わず、その場を後にした。



 __________________________________


討伐対象カオルの第一印象 その3】


【ヴィンセント】

 盗賊シーフ 男 27歳

 「思っていたより若いな……」


【マルカルロ】

 神官プリースト 男 42歳

 「逃げ遅れたとは可哀想に」


【リードルフ】

 剣士ソードファイター 男 35歳

 「逃げ遅れるとは間抜けだな」


【セルヴィア】

 巫女プリースト 女 25歳

 「……?」


 __________________________________


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る