第4話 お尋ね者、副業も始める。



「いやーカオルちゃんが来てくれて助かったよー」


「あ、おっちゃん。サインサイン」



 私はティアーノ商会の配達でいつもは来ない酒場に来ていた。


 もう何度か配達で顔を合わしているので、この店のおっちゃんとも顔馴染みだ。



「おーカオルちゃん。飲んで行くかい? 一杯ぐらい奢るよー」


「マジで! 飲む飲むッ!」



 私は誘われたお兄さんにーちゃんのテーブルへすぐに飛んで行った。


 勿論、おっちゃんは苦笑いでエールを注いでいる。



「なーカオルちゃん。俺のステータス見てみてよ」


「何や。やっぱ、『そっち』が目当てかいな」



 私はエールを一口煽った後、溜息を吐いた。



「奢ってくれたし、しゃーないなー。『鑑定』ッ!」




 【名 前】 エードルフ

 【年 齢】 19

 【職 業】 鍛治師

 【レベル】 13

 【体 力】 108

 【魔 力】 56

 【攻撃力】 78

 【防御力】 84

 【俊敏性】 54


 【スキル】 なし




 私が唱えると、お兄さんにーちゃんのステータスが表示される。


 勿論、私以外の誰にも見えない。なので、私はそれを音読していく。



「えーっと、エードルフ。」



 名前を呼ばれ、お兄さんにーちゃんはピクリと反応する。



「年齢19歳。職業、鍛治師。レベル13。体力108。……」


「ぉおッ! ちょっと上がってる!」



 私が彼のステータスを読み上げると、嬉しそうに燥いでいた。



「俺も見てくれよ「俺も「俺もッ!」」」



 そのテーブルに居た他のお兄さんにーちゃん達もこぞって私に鑑定を依頼する。



「なんでタダでせなあかんねんッ」


「「「エール下さいッ!」」」



 お兄さんにーちゃん達はこぞってエールを注文して、私に奢ってくれた。



「しゃーないなーッ!」




 ***




 エールを飲みながら、その場にいた全員のステータスを見終わるとおっちゃんが渋い顔してやって来た。



「カオルちゃん。配達は?」


「あ、忘れとったッ! お兄さんにーちゃん達、ごちそーさんッ」



 私は慌てて、最後の配達先であるいつもの酒場に向かった。



「姐さん遅かったですねー」


「全くだ」



 いつものテーブルにはヤヌックと店員さんルクレオが座っていた。



「やけに遅いから、最後の配達先ここに来てみたら。まだ来てないっていうじゃないかッ」


「いやー。禿げのおっちゃんとこで、お客さんに絡まれてさー」


「どうせ飲んでたんだろ?」



 店員さんルクレオが疑いの眼差しを向けてくるので、取り敢えず従業員(おばちゃん)の所に行って商品を納品する。



「本当便利よねー」



 従業員おばちゃんは受領書にサインしながら羨ましそうに呟いていた。



「いいように使われてこっちは困ってるねんけどなー」


「こっちは、配達中に寄り道されて困ってるんですけどねー」



 そんな冗談を言いながらテーブルに戻り、店員さんルクレオに全ての受領書を手渡した。



 __________________________________


【カオルの収入源】


・賞金稼ぎからの接収(ファイトマネー)


・賭博の売り上げ

  

・配達のアルバイト


・鑑定士 ← New!



 何気に稼いでいる(?)カオルの現在の所持金は、次回に!


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