第2話 チンピラ、監視される?



 その日は早めに仕事を切り上げてきたダラムとジョゼも加え、昼過ぎから久しぶりに顔見知りの連中バカども大宴会バカさわぎをしていた。



「姐さん、何か外が騒がしいですね」


「ほっとけほっとけ。ウチらにちょっかい掛けて来るなら、返り討ちにするだけやー」


「それもそーっすね」


「「「ガハハハッ」」」



 酒もいい具合に回り、宴もたけなわといったところで、店の入り口付近のテーブルにいた子分どもが何やら慌て始めた。


 不思議に思って私たちが入り口そちらに視線を送ると、2人の正規兵が入り口の両脇に立っていた。


 突然の正規兵おかみの登場で、子分どもは全員立ち上がり正規兵(そちら)に向かって睨みがん利かとばしていた。



「おいおいおい。これまた、ド偉いヤツが来たよ」



 そして、入り口から入ってくる人物を見るなり、ジョゼは口らか豆を落とすくらい驚いていた。



「はればひはん?」(誰が来たん?)


「……この街の市長ですよ」



 市長と呼ばれる男性は、その後ろに若い男性と初老くらいの男性を引き連れて迷いなく私のテーブルところまでやって来た。




 ***




「……いやー君の噂は予々耳にしているよ。ねえ、サノワ君?」



 一頻りお互いの自己紹介を終えた後、この調子で私の事を褒めちぎるってよいしょしているのが、バーウィッチこのまちの現市長ヴィエールだ。


 彼は出されたエールを一口飲むなり、渋い顔をしてジョッキをテーブルに置いた。それから一口もエールには手をつけていない。とても鼻に付くおじ様クソジジイだ。



「はひ。ほふへひばんほ、ひほひべはひへふはへはほか、」(はい。傭兵団を一人で壊滅させたとか、)



 私がテーブルに並べられた料理を勧めてから、ずっと料理を口に運んで咀嚼しているのが、傭兵ギルドのギルドマスターである、サノワだ。


 三人の中でも一番若く、私と同じくらいの歳に見える。さらに言えば、食い意地は置いといたとして、顔は美形イケメンだった。向こうから口説いて来るなら、まあ付き合ってやらんでもない。



「…………。」



 自己紹介を終えてから一言も話さずに、エールをひたすら飲んでいる男性おじいちゃんは、冒険者ギルドのギルドマスターのアイヴォン。


 三人の中で恐らく一番年上であろうアイヴォンは、あまり口数は多くない。しかし、彼はこの短い時間にエールを3杯も飲んでいる。酒好きに悪い奴はいないと言うし、一番信用できそうだ。



 ……っと言うか、なんやねんこれ!?



 テーブルには私と連中が着いており。子分どもダラムたちは私の後ろに立っている。勿論、連中の後ろには正規兵が2人控えている。



「あー、俺の肉が……」



 サノワが次々とテーブルの料理を平らげるのを見ていたヤヌックアホが泣き言を言っていた。その間も、ヴィエールは独りで話をし続け、アイヴォンはひたすらエールを飲み続けていた。



 あーもぉー。なんで偉いさんは、こうも話が長いねんッ!



 私はヴィエールの話を右から左に聞き流しながら、渋々エールを煽っていた。



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【登場人物紹介】


【ヴィエール】

 バーウィッチの市長 男 39歳


 国王からバーウィッチの市長に任命された侯爵。

 平穏なバーウィッチの街に突如現れた『鬼人』に頭を抱えている。


 カオルには、一刻も早くこの街から出て行って欲しいと思っている。



【サノワ】

 バーウィッチ傭兵ギルド、ギルドマスター 男 21歳


 若くしてギルドマスターに就任した敏腕ギルドマスター。

 ルクア傭兵団が壊滅した為、彼らが請け負っていた仕事の再依頼で最近は寝ず食わずの生活を送っていた。


 カオルには傭兵団を立ち上げ、ルクア傭兵団の代わりをして欲しいと思っている。



【アイヴォン】

 バーウィッチ冒険者ギルド、ギルドマスター 男 57歳


 元Aランク冒険者。現役を引退してからは、ギルドマスターに就任。

 大の酒好きだが、ギルドマスターの仕事が忙しく、お酒はご無沙汰だった模様。


 書類仕事ばかりだった事もあり、カオルの登場に少しばかり浮き足立っている。


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