第6話 チンピラ、喧嘩を買う。



 店内は騒然とした雰囲気となっていた。


 勿論、その原因は私と私の目の前にいる傭兵だ。



「はぁ……」



 向かうから煽って来ておいて、逆ギレとは傭兵ヤツの底が知れている。


 まあしかし、店で暴れられると従業員おばちゃんに迷惑が掛かるので、取り敢えず外に出ることに決めた。



ここで暴れるんやったら、正規兵おかみんとこ行くことなるで」



 私はゆっくりと立ち上がり、得物に手を置いている傭兵に対して睨みを利かせた。



「取り敢えず、外出えや」



 すると傭兵は、苦虫でも食べたかのような表情になり、渋々といった様子で私の後をついて外に出た。



『なんだなんだ』


『喧嘩か?』



 昼間ということもあり、あっという間に私たちは野次馬に囲まれた。



「こんなようさんの野次馬お客さんの前で恥かいて大丈夫なんか?」



 私は髪を解きながら周りを見渡していると、臨戦態勢だった傭兵は問答無用と私に切り込んできていた。



「減らず口を叩けるのもここまでだ」


「いきなりかいッ!」



 勿論、そんな分かりやすいトロイ攻撃に当たる筈はないが、傭兵というだけあって反撃を入れる隙は少ない。


 それに、得物を使っている分、明らかに私と傭兵とでは間合いが違いすぎる。


 傭兵の攻撃は避けることは出来るが、こちらから攻撃を仕掛けることは難しい。



「……長剣それ、邪魔やな」



 そう思った私は、わざと傭兵の間合いに飛び込み、顔面に向かって攻撃を入れる。


 普段、長剣同士での戦いに慣れれいるのだろう傭兵は、私の拳を咄嗟に剣で受けようとする。



「あほやなー」



 その瞬間を私は見逃さなかった。


 私は、すぐさま逆の拳に力を込めた。すると突然、拳が光りだした。



 ……なんか、いけそうやな。



 そして迷いなく、正拳突きを傭兵ヤツの剣身の腹に叩き込んだ。



「なッ!」



 私の拳を受けた長剣は、私の思惑通りそこから綺麗に折れた。



「ちゃちな長剣もん使ってんねんなー」


「んなッ! 無茶苦茶だ……」



 私がニヤリと笑う一方で傭兵は信じられないと驚愕の表情をしていた。


 しかし、傭兵はすぐさま距離を取り、長剣を捨てて短剣を取り出し構えた。が、もう既に遅かった。


 私は長剣を折るとすぐに、もう一度傭兵の懐に飛び込み一撃を叩き込もうとしていた。



「クソがッ!」



 それを傭兵は正面から迎えようと短剣を私に突き刺そうとする。



「それもバレバレやで」



 そんなところに、私がわざわざ突っ込んで行く筈もなく。


 私はそのまま体を捻って回転させ、左足で傭兵の左頬に回し蹴りを入れた。


 無防備ノーガードになっていた、頭への攻撃に傭兵は気がつかず、そのまま吹っ飛ばされた。



「「「うおぉぉー!!」」」



 それまでの攻防を観戦していた野次馬オーディエンスから歓声が上がった。


 私はそのまま気絶した傭兵の側へ歩いて行き、懐を弄った。



「おッ! 結構入ってるやんッ♪」



 傭兵から頂いたうばった皮袋の中には、金貨が1枚、銀貨が13枚入っていた。



「ほな、またな。って聞こえとらんか」



 私は再び酒場へ戻った。



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【スキル解説】


非魔法適正ちからずく


 魔法系スキルが使用出来ない代わりに、魔力を消費してその値を攻撃力に上乗せできる。

 その際に、道具などを破壊することも可能。


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