第9話 元就活生、ナンパされる。



 折角、人が気持ち良く飲んでるっちゅーのに、何やこいつらは?



 口には出さないようにしながら、私は彼らゴロツキに視線を送った。



 ひーふーみー、……6人か。



「何ですか、お兄さん達?」



 ここは様子見という事で、町娘カマトトのフリをしてみる。



「そんなちんけな連中と飲んでないで、俺たちと楽しもうや」


「えー、奢ってくれるんですかー?」



 私は一番偉そうなお兄さんゴロツキに上目遣いで尋ねてみる。



「おうよ。好きなだけ飲ましてやるよ」


「やったー」



 奢ってくれると言うのだから、ここは素直に甘えるとしよう。


 私は立ち上がり彼らゴロツキについて行く。


 彼奴らダラムとヤヌックは潰れて気がついていないみたいだった。


 まぁ後で迎えに来るから、しばらくそこで寝てな。




 ***




 先程の酒場を出た後、私とお兄さんゴロツキ達は、別の酒場で飲み直していた。



「嬢ちゃん見かけない顔だが、どこから来たんだ?」



 一番偉そうなお兄さんゴロツキが私の隣に座って、肩に手を回してくる。



「えーっと。日本って所なんだけど、お兄さんは知ってる? あ、おかわり下さい」


「ニホン? 聞いた事ねぇな。おい、お前ら知ってるヤツはいるか?」



 彼が他のお兄さんゴロツキに話を振るが、皆首を横に振る。


 日本の事を誰も知らないようだ。



「そっかー」


「そんな事よりも、今晩どうだ?」


「えー。何がですかー。あ、おかわりくださーい」



 やっぱりそっちからだが目当てか。


 あーあー。これだから男は嫌なんだよねー。



「清純ぶんなよー。町娘が酒場で飲んでるなんて、そっちから誘ってるようなもんじゃねぇか」



 近い近い。徐々に顔を近づけて来るなッ!



「えー。カオル、何のことかわかんないなー。あ、おかわりー」


「だ・か・ら〜男と女が夜することなんてきまってるだろ〜」



 ちッ、本題に入ってきやがった。


 もうちょっと飲んでから帰るトンズラするつもりだったのに!


 はぁ、この辺が引き際か……



「カオル、なんか怖くなって来たから帰ります」



 私は立ち上がり、店を出ようとする。すると、お兄さんゴロツキは私の腕を掴んだ。



「おっと、今更帰るなんて虫のいい話はねぇよな?」


「はなせ……」


「は?」


「離せって言ってるやろ、ボケがッ!」



 私は飲みかけのエールをお兄さんゴロツキの頭にぶっ掛けた。



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【今晩のカオル酒】


エール8杯(1軒目4杯、2軒目4杯)


記録更新!


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