美術館に佇むような。ラグジュアリーな感動をカクヨムで。

美術品を前にしてため息をつく時に近い感動を覚えました。

いうなればオパール色の霧のような、しっとりと水気を帯びた深いものに包まれる気分でした。
上のほうに青い色が見えたので、海の底に沈んだ幻を感じているのかと思いきや、物語の終盤に向かうにつれ、見えたはずの青い色が、染料の色だったのだと気づきました。
きっと私は、物語を読むうちに、ベットガーと同じように磁器の魅力に翻弄され、白い磁器の内部に取り込まれたのだと思います。

このような内容が、物語に出てくるわけではありません。
不勉強でこの物語の舞台のことはよく知らないのですが、知らない私でもその世界に没頭できるように、磁器の生成に懸ける男の生き様が、細部まで丁寧に描かれています。
つまり、この作者は、表面上の出来事を描きながら、同時に、並行した宇宙のように物語の真髄を伝い這わすことができる稀有な方なのだと思います。

読み手の心の奥底深いところまで揺り動かしてくる、美の魔性にとりつかれた男の物語です。

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