第11話岩手の探偵

  19-11

翌日岩手の亜希が「もしかしてテレビの女の子、貴女の子供では?」と電話をしてきた。

麻由子は亜希の言葉に唯、泣き崩れるだけだった。

亜希は麻由子が泣き止むのを待って「何年か前に、変なビラが届いたわよね、あれ関係ないのかな?」と言うと「えー、私のデリヘル勤めと娘は関係無いのでは?」

「警察に話してみれば?」

「馬鹿な事を言わないで、娘が誘拐されたかも判らないのに、デリヘルの話出来ると思うの?」

「そうよね、娘さん帰って来ても、離婚が待っているか!」

「。。。。。。」そう言われて麻由子は娘の命か自分を守るかの苦悩が始まってしまった。

翌日も何も捜査の進展がなくて「何か心辺りが有りませんか?」と和田は必要に尋ねた。

真三は全く心辺りが無いと答えるが麻由子は「あ、有りません」と何か変だと和田は麻由子の心の変化を読み取っていた。

和田は麻由子が真三の居ない時には話すのではないかと考えて話を切り出した。

「何か、心辺りが有るのでは?」と話しかけた。

しばらく考えて「私は、考えられないと話したのですが、友人の大西亜希が、関係が有るのではと言うので、それより秘密は守って貰えますか?」心配そうに尋ねた。

「私共は秘密を必ず守ります、御安心を」と和田は安心させる様に言う。

「今回の事件とは関係無いと思うのですが」と麻由子は一枚のビラと手紙を差し出した。

「これは?何でしょう?」

「二年程前に、この住宅地に配布されたビラですが、この手紙がその後投函されていたのです」

「心辺りは?」

「全く有りません」

「何か事件が有りましたか?」

「何も有りません」

「何の為に、この住宅地に配布したのですか?」

「全く判りません」と麻由子は自分の事だとは言わなかった。

和田は、自分と関係無い物を麻由子が持っている事事態不思議だと思った。

もしかして、この女性は昔働いていたのでは?の疑問が湧いたのだ。

口には出さなかったが、そのビラと手紙を県警に持ち帰って、これが何処の店の事なのかを調べる事にした。

それと同時に麻由子の友人亜希の住所を聞いて帰って行った。

姫路の捜査本部は凜の失踪、事故の可能性は少ないとの結論を出していた。

可能性は誘拐が大きいが、理由が全く判らない。

「変質者の犯行の可能性が有るな」

「事故でなければ、ロリータ趣味の男ですか?」

姫路の捜査本部は変質者の犯行説が有力に成っていた。

東番地域で変質者のリストを調べて、一人一人調査を始める姫路警察。

県警の和田は岩手の友人亜希に電話でビラの話を尋ねたが、麻由子に聞いて下さいと言って何も話さなかった。

亜希は麻由子が言わない事を自分が話す事を躊躇ったのだ。

和田はこのビラのデリヘルは何処なのだ?と探す為に、麻由子と亜希の共通点を探した。

十数年前二人は東京の大学の同期で仲が良かった事を調べて、その間にこのビラのデリヘルで働いたのでは?の疑問が湧いていた。

だがこのデリヘルが何処なのか?和田達の捜査でも中々判明できない程、夜の仕事の新陳代謝は激しいのだ。

ビラの写真の人物が麻由子だとの証拠も何も無いから、全く捜査は行き詰まる。

凜が消えて二週間が瞬く間に過ぎた。

和田は麻由子から聞く事が不可能なら、亜希に聞こうと思い岩手に出向いて、何か新しい手掛かりを掴もうとしていた。

姫路警察の変質者のリストには凜の誘拐犯は、誰も該当が無かった。


翌日和田と山本と晶子の三人は岩手の空港に降り立っていた。

ここでも信じられない偶然が起こったのだ。

「すみません、この住所に向かって下さい」と差し出したメモを見て「漁業組合の大西さんですね」と運転手が言う。

「よく知っていますね」

「大西さんはお友人の友達ですから」と答える男は個人タクシーの赤沢だった。

「お客さん達は警察?探偵さん?」と尋ねる赤沢。

「判るのか?」

「何年か前にも探偵さんを乗せたから、大西さんは探偵さんに疑われる人ではないのに、何故また探偵さんが来るのかと思ってね」と話した。

和田は手帳を見せて「我々は関西の警察なのだが、今の話もう少し詳しく聞かせて欲しい」と和田は赤沢の話に興味を持った。

赤沢は遠い記憶を話し始めて「大西さんの奥さんと一緒の女性を追って、探偵さんが空港から、乗ってきました」と当時の事を話した。

「大西さんの奥さんと?」

「その時は知らなかったのですが、後で大西さんの奥さんだと知りました」

和田は写真を出して「この女性は知らないか?」と麻由子の写真を見た赤沢は「この女性を探偵さんが追い掛けて来ましたよ、翌日大西さんの自宅に探偵さんを送りました」

「その探偵の特徴は?」

「相当な年寄りでしたよ、頭は禿げていましたね、その写真の女性を追い掛けて来ていましたね「花巻館」にその写真の女性と大西さんの奥さんが泊まったので、探偵さんも泊まりましたね」

「その男は何故探偵だと思うのだね」

「何も荷物を持たないで、尾行していましたから、普通旅行を計画している人は荷物を持って来ますでしょう」

「成る程、予定に無い行動に驚いて尾行してきた?」

「はい」

和田は麻由子に何か秘密が有って、誰かが調査を依頼してこの岩手まで来たのだと思った。

大西亜希の自宅に行くと亜希は驚いたが、麻由子の子供が未だに見つからない事に心配をして「二年前に、麻由子がビラと手紙を持って、相談に来た」と話した。

「このビラの女性は誰ですか?」

「判りません、このビラが麻由子の自宅と近所に配られた事は事実ですが?」

「森健太?坂田百合、真木麻子と言う人には、心辺りは有りませんか?」

「全く有りません」と亜希は答えてデリヘルの話はしなかった。

和田達は大西の自宅を出ると「花巻館」を目指した。

その探偵の宿泊記録を見る為、カードを利用していたら、直ぐに誰なのかが特定出来るからだ。

しかし、カードの利用は無くて和田の期待は脆く消えてしまった。

「数年程前に探偵は、麻由子の何を探してここまで来たのでしょうね」

「誰が調査をしていたのだろう?」

「真三?」

「違うだろう、麻由子の過去に何か秘密が有る気がする」

「もし、麻由子がこのビラの本人だとして、探偵が何を探していると思いますか?」と晶子が言う。

「そうだな、昔のバイトがデリヘルをしていて、亭主に見つからない様にはするだろうが、亭主が探偵を雇って、尾行はしないだろうな」

「誰かが探偵を十数年経過してから雇うでしょうか?」

「じゃあ、他の事を探していたのか?」と三人は帰りの飛行機で三様に考えて益々謎が深まってしまった。


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