第9話

「ここが娘の部屋だ」


 謁見の間でのことがあった後シュウたちは王様とリリシアと一緒にすぐ姫様の部屋を訪れた。


「これは・・・」


 姫様の部屋の前に来るとエルが何かに気づいたような声を出した。その声はシュウにしか聞こえなかったがシュウは気にしなかった。


「レリア、入るぞ」


 アレクセンはノックし声をかけドアを開けた。部屋の中には一人の女性とベットに苦しそうに横たわる少女がいた。


「あら、あなた。そちらが?」


「ああ、そうだ」


 女性がアレクセンに問いかけシュウ達のほうを向いた。


「はじめまして、私はレリア=フォード=リセイブドルよ。よろしくね」


 そういいドレスをつまみで頭を下げた。


「俺はシュウっていいます。そして、後ろにいるのが俺の・・・メイド?のエル、ガブリエルです」


 シュウはエルを紹介しようとして自分の何かと思い後ろにいるエルをちらりと見てエルが着ている服が目に入ったのでメイドとして紹介した。


「シュウ様のメイドをさしていただいておりますガブリエルと申します」


 シュウの紹介を肯定するようにエルは自分のことをメイドと紹介した。


「よろしくね、シュウ君、ガブリエルさん」


 レリアはにこりと微笑んだ。


「それでガブリエル殿、リリアを見てはくれないだろうか?」


 レリアの紹介が終わったのを見計みはからってアレクセンがエルに言った。


「ええ、ですがだいたいの原因は見当がついております」


「本当か!ならば治せるのだ!」


 エルの言葉にアレクセンとレリアは希望に満ちた表情をした。


「いえ・・・」


 だが、エルは申し訳なさそうな表情をした。


「この症状は私では治せません」


「そ、そんな・・・」


 エルの言葉を聞いたアレクセンとレリアは希望に満ちた表情から一転絶望のどん底に落とされたような表情に変わった。


「ただ、私は治せませんが・・・」


 エルはそう言いつつぼーっと成り行きを静観せいかんしていたシュウを見た。


「シュウ様ならどうにかできるかもしれません」


「・・・俺?」


 自分は何もできないと思っていたので話を振られたシュウは驚いたように自分を指差しつつエルに確認した。


「はい。アレクセン様方にも説明しますとリリア様がかかっている病気、というかこの症状は魔力暴走です」


「魔力暴走?」


 シュウがエルに聞く。


「はい、通常魔力は体全体を頭からから右手、右足、左足、左手、頭っと法則的に流れるのですがこの魔力暴走は魔力が法則的にではなく流れるので体内で魔力同士がぶつかり今のリリア様のように人体に影響を及ぼすのです」


「なるほど、確か本にもそんなことが書かれてたな」


「通常は魔法を使用すると魔力が自動的に法則的に流れるようになるでこの症状になることはないのですが・・・」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。二人は何の話をしているのだ?」


 シュウとエルが魔力暴走について話していると慌てた様子で話しかけてきた。よく見るとレリアやドアのほうで待機していたリリシアは口を半開きにし驚いた表情をしていた。


「何ってそこのお姫さんの症状についてですけど?」


 シュウは何を言ってるんだという顔でアレクセンを言う。


「それはわかるのだが・・・。シュウたちが言っている魔法とはあの魔法か?」


「たぶんその魔法だと思いますよ」


 その言葉を聞いたアレクセンはさらに驚いた表情をした。


「陛下、彼は魔法を使ってガブリエルさんを召喚したんです。それと彼は プレイヤー ・・・・・です」


「なるほど、しかし・・・」


 リリシアはシュウがプレイヤーであることをアレクセンに伝えるとどこか納得した感じを出したが、やはりどこか納得しないい部分があるようで難しい顔をした。


「?とりあえず俺はどうすればいいんだ」


 シュウはリリシアがなぜ自分をプレイヤーだと知っているのか、アレクセンがなぜプレイヤーと聞いて納得した風な顔をしたのかなど疑問に思ったが今は苦しんでいるリリアを救うほうが先だと思い無視することにした。


「まずシュウ様目に魔力を集めてみてください」


「ん」


 エルの言葉に頷くとシュウは目を瞑り体中にある魔力を目に集めるよう意識した。少しすると目に魔力が集まる感覚がし目が温かくなるのを感じた。それを感じたシュウは目を開けるとエルの体が光っているように見え、そしてベットに寝ているリリアからは不規則に明滅めいめつしたり大きく揺れ動いたりする光が見えた。


「これの光は?」


「今シュウ様が見ている光は魔力でございます」


「へ~、魔力」


「はい。シュウ様さらに魔力を目に集中させることができますか?」


 シュウはエルに言われるがままさらに魔力を目に集中させた。すると、シュウの目にエルの体全体に管のようなものが無数に張り巡らされているのが見えた。


 実はシュウはこれらを簡単にやっているが実際は長年修行した魔法使いがやっとできるようになるのである。だが、シュウは魔法や魔力との相性がかなりよく図書館でやったエルの召喚や魔法名のみでの魔法の使用などは通常の魔法使いが生涯を賭として修行し使えるか使えないかの手法なのだ。


「それは魔視と呼ばれるものです。そして、見えている管を魔管といいます。その状態でリリア様を見てください」


 シュウは魔視を使用したままリリアを見ると魔管に流れる魔力が逆流しているところがあり流れてくる魔力と衝突していたり魔力が詰まって流れていなかったりしているところが多々あった。


「もしかして魔力暴走の原因はこれが原因なのか?」


「はい。それでシュウ様にやっていただきたいのは、逆流している魔力や詰まっているところを正しく修正していただきたいのです」


 エルがシュウに言ったことを実行するにはかなり困難なことであった。

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