花の下に想う
雨に散る桜の下は、一面落ちた花弁で薄紅の雪が降り積んだようだった。
濡れて痛んだ薄紅は、溶けることなく腐る。
儚くありながらも跡形なく消えることを許されぬ姿は、
「命」そのものに見えた。
歳の離れた友人が育てていた若い山桜が、
早逝した主を悼み涙雨に花を散らしている。
屋敷の外へ出られなかった友人は、
小鳥の零した種から芽生えたこの山桜を愛でた。
その友人も、もう居ない。
艶やかに咲き、瞬く間に散る花同様、
美しい容貌が衰える間もないまま、儚く散った命だった。
山桜は染井吉野と異なり、紅い実を熟れさせる。
友人が晩年心血を注いだ研究も、きっと。
努力の結実を祈って、まだ細い幹に触れた。
弔花は散り、生命の季節が始まる。
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Twitter300字ss参加作。お題:散る
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