第13話朝焼け

朝になるとツカサは、僕を無理矢理起こして病院の屋上に引っ張って行った。


「何?」


「あれ、見てよ。」


地平線の先から業火に焼かれて冷やしたような朝焼けが顔を出した。


「あんたに、見せたかったんだ。」


「綺麗なんだろうけど僕は良く分からないんだ。景色やヨーロッパの城やそういったものが分からない。」


ツカサは、僕の腕をしっかり掴んで


「大丈夫。」


と言った。


ありがとうとは言わなかった。


複雑な気持ち。これが罪の報いなのかもしれない。


病室に戻ると出川がテレビのワイドショーを見ていた。


出川は、僕を睨んでいる。


ツカサが、僕から離れないのが理由らしい。


「お前、指名手配されてるぞ。」


「だから、僕は自首するって。」

 

テレビを見ながら出川は冷たく言った。


「自首する必要ないし、指名手配なんてされてないじゃない。」


「バレたか…。」


出川は、ツカサに嘘を見抜かれて舌打ちした。








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