第38話

 工具売り場に着くと、二人はすでにいろんな種類の鎖を見比べていた。

 「こっちの方が軽いよ。そっちは太くて重すぎるよ」

 「でも、英ちゃん、何本か持っていったほうがいいんじゃない?」

 カッコも手に鎖を持って、見比べながらいろいろと考えているようだ。

 「うーん、たしかにそうだなあ。あっ孝くん、南京錠さがしてよ」

 英ちゃんにそう言われて僕はカギを探して棚をめぐり歩いた。普段は来ないこの場所には、さまざまな種類のネジやボルトが置いてあった。

 「あった。これでいいかな」

 こうして僕らが鎖と南京錠を選んだころには、外はだいぶ薄暗くなっていた。一階正面入口のガラスの向こう側には、すでにぼんやりとあいつらの白い影がうごめきはじめていた。

 「あー、今日はもう行けないかなあ。もう“さまよい”が出てきたよ。あいつら何なんだよ。気味悪いよねえ。まあ、あしたなるべく早起きをしてすぐに出かけようよ」

 英ちゃんが鎖を頭の上でぶんぶん振り回しながら言った。

 「ちょっと、英ちゃん、危ないよ。ぶつかったらケガするだろ!」

 カッコは文句を言いながらも、少しずつ気力を取り戻しているようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る