3-2:ライチ1

ミライとマモリがアトリエから出ていった後、残ったライチには大きな仕事があった。転送魔法の痕跡が消える前に、転送先を探さなければならない。だが、ライチには魔力が殆ど残されていない。


しかし、こういうときのために、ライチは大量の魔力を外部に保存しているのだ。

「さあ、やるか。久しぶりにね」

アトリエの中心に立ち、魔道具の筆を両手に何本も持ち、呪文を唱える。


「”『夢』に描かれた色よ、その『停滞』を解き、我が色を『増殖』させ、黒の行方を『探し』出せ”」

ライチが筆を持った両手を頭上に掲げる。アトリエ中の絵から色が消え、全てがライチの筆に戻っていく。


ライチの描く絵は全て魔力が込められており、緊急時の最終手段として、絵を魔力を戻すことができる。しかし、この絵を描き上げるために膨大な魔力が必要であり、効率は極めて悪い。ゆえに、最終手段なのだ。


ライチの頭上で、緑、橙、紫の色が輝き、魔力となる。

「さあ、頼むぞ!」

腕を振り下げ、リッカが消えた場所に魔力を叩きつける!魔力が輝き、床に何かを描き上げた!


「これは……!」

それは、リッカの家だった。

「いや、しかしこれは、どういうことだ?」


ライチは困惑した。転送先がリッカの家ならば、場所はすぐ近くだ。だが、なぜわざわざそんな場所に逃げる必要があるのか?罠か、あるいは……。

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