1-11:ライチ3

ミライ、マモリ、ライチの3人は、ライチのアトリエに集まって、それぞれの情報を共有した。

「よし、それじゃあ一旦情報を整理しよう。この絵の子、つまりリッカちゃんは昔ココらへんに住んでいて、一度は引っ越したけどまた戻ってきたってことだね」


「で、これからどうするの?殴り込み?」

マモリは気が早い。

「いや、流石にそれはちょっと早いかな。でも、一度行ってみるのはいいかもしれない。ミライ君が昔の知り合いだったら話しやすいだろう。行ってくれるかな?」


「はい。ただ、ライチさんたちにも一緒に来て欲しいです。何かあったら大変ですし」

「うん、そのほうがいいだろう。マモリちゃんも一緒にいくよね?」

「ええ、行きましょう!」



……リッカの引越し先の家は、ごくありふれた住宅地の一軒家だ。

呼び鈴を鳴らすと、リッカのお母さんが出迎えてくれた。

「どちら様ですか?」

「あ、えーと、僕、新井 未来(あらい みらい)です。えーっと、リッカさんの友達だった……」


「あら!ミライ君!久しぶりね!大きくなって!なんて言っても、おばさんのことは覚えてないかもね」

「は、はい……」

言われたとおり、ミライはまったく覚えていなかった。


「いいのいいの。まだ小さかったんだし。でも、ごめんなさいね。リッカは病院なのよ……」

「え?」

「一昨日の朝に急に倒れちゃって、そのまま緊急入院。まだ意識がぼんやりしているみたいで、起きてもずっと上の空で、話しかけても反応ないの」

「そうだったんですか」


一昨日、つまり守りが黒魔法を撃退した夜の次の日であり、ライチがリッカの似顔絵を書いた日であり、ミライが魔法に目覚めた日でもある。辻褄が合ってきた。が、ライチはもう一つ、あることに気がついた。

(この人は、嘘をついている)


嘘をついている、正確には、嘘をつかされているというべきか。娘が急に倒れたというのに、妙に落ち着いている。おそらく、そういう魔法にかけられている。

(でも、ここで魔法を解除したら、それこそパニックになるだろう。今はまだその時ではない)


「よかったらお見舞いに行ってあげて。ミライ君が話しかけてくれれば、リッカも目が覚めるかもしれないし」

「はい。ありがとうございます」

三人は病院へと向かった。

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