1-5:ライチ1

ライチは、魔力を持つ少年とともに、自作のアトリエへとやってきた。

「改めて、俺はライチ。しがない絵描きさ。表の顔はね」

「表の顔?」

少年が聞き返す。


「ああ、裏の顔……というか本当の顔は魔法使い。ここは俺のアトリエであり、魔法の研究室ってところかな」

ライチはそういうと、アトリエの奥にある壁に向かって、緑色の絵の具の付いた筆を振った。

「”隠された部屋を『探し』出せ”」


呪文とともに壁が緑色に光り、壁は扉となった。

「さあ、来てくれ。えーっと……」

「あ、新井 未来(あらい みらい)です。」

「ミライ君か。さあ、どうそ、ミライ君」

ライチはミライを魔法の扉の奥へと誘う。そこにはなんとも言えない奇妙な色合いの絵がたくさんあった。


「さて、本題だ。キミはその力を、どこで手に入れたんだい?」

いきなりの質問だ。ミライは当然ながら困惑する。

「え、あ……」

いや、困惑するというよりも、怪しむと言った感じだ。ミライは、まだライチを信用していない。その証拠と言ってはなんだが、ミライの目つきは鋭い。


「まあ、キミの気持ちもわかるよ。誰だってこんな状況になれば、俺を信用できない。だから……」

ライチはそういうと、緑の絵の具が着いた筆をミライに向けて突きつけた。

「”眠れ身体よ……」


「ちょっと待ったぁ!」

ライチの呪文を遮る声がアトリエに響く!現れたのはマモリだ。

「そんなんじゃ警戒されるに決まってるでしょ!もうちょっと話してやんなさいよね」


「あ!マモリ!」

ミライは安堵する。知り合いなのだ。

「なんだ、ミライじゃん。そんなら話は早いわよ。これからアンタの魔法の力、見せてもらうから。いいよね?」

「え?」


全然良くない。ミライはそう言おうとしたが、そんなことを待ってくれるマモリではなかった。

「それじゃライチさん、呪文お願い」

「ほいきた」

「いやちょっと待って全然話がわからな……」

「”眠れ身体よ、開け『夢』よ”」

ライチの筆がミライに触れた時、ミライは気を失った。

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