働く青春

社会経験のない若い人に仕事を作らせるとどうしてもいろいろな不備が出てくるもので、選ぶ業種も教育や販売といった、見覚えのあるものに偏りがちになるのが普通かと思います。

市場を調べる、客層を決めるといった、企画に関わる会社員であれば誰もが思いつくようなアイデアも、大学生であればなかなかピンとこない。なので、そこをどう描いてくるかな、というのが今回期待していた大きなポイントでした。

働くヒトコンテストの他の作品はある程度までは仕事を知っていて、これからプロとしてどうやっていくか、を描くものが多いのですが、ズブの素人が一から仕事を作るのはこの作品以外あまりないのではと思います。
乙島さんの腕の見せ所だなあと思いました。

私の感想としては、スモールステップがとてもうまくできていたなという印象です。商店街の人と出会い、関係を作り、意見が衝突し、失敗する。人を集め、経験を積み、意外な驚きがあり、恋も芽生える。そうした細やかな変化を段階的に表現し、主人公の成長と職業に関する情報を織り交ぜるという描きかたが、テーマにあっていてとても良かったです。

それと、後半に登場する仮面の方、詳細は伏せますが、この役がとてもインパクトがあり、飽きさせない工夫も見事でした。

スポーツや勉強だけじゃない、初めて社会に立ち向かい、苦境をのりこえ成長する若者たちの姿が眩しいです。今回も良い作品を読ませていただきました。

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