ワスレナグサ

厳しい寒さの冬も過ぎ



街ゆく人々も薄着になっていく春。



とある、大学病院の病室にもう何年も



入院している少女がいる。



彼女は生まれつき重い難病に掛かり



医師も治す手立てさえ未だ見つけられていない。




ガラッ…。




瑞『れーい』



玲『瑞希』



瑞『どうした?元気ないじゃん』



玲『う…ん。』



瑞『また、いつもの発作出た?』



玲『ううん。違うの最近は落ち着いてる』



瑞『じゃ、何でため息なんか』



玲『もう、季節も春だと言うのに私は

ずーっとこの真っ白の部屋で過ごしてる』



瑞『それは、仕方ないよ』



玲『そーれ、看護師さんにも言われた』



瑞『玲は体調が安定するまで外禁止だもんね』



玲『もう、安定してますぅ』



瑞『プッ…玲は外が好きだねぇ』



玲『外が好きなんじゃなくて花を見たいの』



瑞『花?』



玲『瑞希や皆が買ってきてくれる花も

いいんだけれど…自然の花を見たいの』



瑞『玲…』



玲『だってね、春はたくさんの花が

目を覚まして咲き始めるのよ?それを見たいの』



瑞『そっか…。』



玲『まぁ…瑞希に愚痴っても無理だけど』



瑞『…。』




瑞希は何かを考え込むように黙った。



でも、直ぐにこう言い放った




瑞『玲…!外に出よう!』



玲『へ?無理だよ』



瑞『大丈夫!先生には私が言うから!』



玲『で、でも』



瑞『車椅子なら大丈夫!そうと決まれば

善は急げだよね!ちょっと聞いてくる!』



玲『あ、瑞希!行っちゃった。』




瑞希は一目散に玲の担当医の元へと



走っていった。

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