第6話 決意

 何か、大切なものを一つだけ貰えるなら、私はあの子がほしい。

 もう一度、あの子に合わせてもらえる権利でもいい。


 けれど、『一度だけ』なんてきっと無理ね。何度でも会いたいと思ってしまうもの。


「…あの子が、会いに来てはくれないかしら……」


 何てこと、ある訳ないか。



しろ、どうして…あいつに……」

「どうしたの、紺」

「……ううん。ごめん」

「いいえ…?」


 僕が泣きそうになってどうするんだ。何故涙が出てくるんだ。

 どうして、僕が悲しいと思っているんだ。


 僕は……。


 僕が――。



「白、今日は少し空が暗い。悲しいのかな?」

「…そうね。でも、それは悲しいのではなくて少し休憩しているのよ」

「……休憩?」

「そう」

「な、なんでそう思うの?」

「だって、いつも明るく元気にしているけれど、いつもそうでは疲れるでしょう? だから、空も休憩しているのよ」

「……それも、あいつに?」

「………うん」


 僕が教えてもらったことと同じ。やっぱりあいつなんだ。


 だから、僕があの子を、白を守らなきゃ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る