ある創業者の死
探偵が鼻をすすると、老人は穏やかに微笑みながら言った
『相変わらず機械がお嫌いなようですな』
『ああ、他の連中と違って、学ぼうとは思うんだが、どうも種族全体がアレルギーなんでね』
ははは、と笑声をあげながら、老人は尋ねる
『ところで、
『おたくの奥さんを殺したヤツについて、聞きたいことがあってね』
『ほうほう』
老人の様子をみながら、探偵は続ける
『つい先日、ギャング同士の抗争があって、そいつはどうやら双方の組織を利用しようとして、結局巻き添えで殺されたらしい』
『ふむふむ、で、何を聞きたいので?』
『それがな、そいつやギャングたちは、偶然そこにいた訳じゃないらしい』
『へえ』
『で、僕はこう思った訳だ、ヤツらを誘導したやつがいる、とね』
『つまり』
と老人は言った
『わしがそう仕向けたと?』
『証拠はないがね』
『何故こんな話を?』
探偵がふと外を見ると、ツインテールの眼鏡少女が、嬉々として、機械いじりをしていた
どうやら、付き添いで来た少年に、自分の作った機械について説明しているらしい
少年は、まるで興味のないそぶりで、それを聞いている
それを見ながら、探偵は
『いや、もう会えない気がしたんだ』
と言った
『ほう、あなたにしては珍しいですな、他人に気を使うとは』
『この歳になると、別ればかりで、さすがに嫌な気分になるもんだ』
と、探偵はうんざりした顔をした
数日して、老人は死んだ
彼の唯一の遺産である一代で築いた町工場は、孫娘であった眼鏡少女が継いだそうである
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