第23話外れぬ首輪 3

お互いの休みが合った日。

彼は我が家やってきた。

スーツを着て、手には菓子折りを持って。



姉と姉彼には外出して貰った。

汚らしいあいつらに、私達の関係をぶち壊されたくないから。



母は彼の真面目そうな外見と礼儀正しさにとても喜んだ。

彼も嬉しそうだった。


「来週の日曜日、僕仕事が休みなので舞子さんの荷物を僕の家に運んでも良いですか?」


「えぇいいわよ。こんな素敵な人と結婚出来るなんて、お母さん嬉しいわ」



こんなにトントン拍子に話が進むなんて・・・・。

ただ母は知らない。

彼の秘密を。




全ては上手くいっていた。

大きな隠し事をしていたけど、それでも良いと思った。


円満に過ごせるなら、円満に過ごしたい。

隠し事は私と彼、2人で抱えて生きていけばそれでいい。



そう私は思っていたけれど、彼はちがったみたいで。

和やかな時間を過ごした後、彼はうちを出る時に1つの秘密を母に打ち明けた。



「僕は2度結婚と離婚をし、1人子供が居ます。

子供が1人居ますが・・・・・・舞子さんと真剣に将来を考え、お付き合いをしたいと思っています」



衝撃的な告白をした後、頭を深々と下げ彼は帰って行った。

家に残された私と母。



ゆっくり母の方を見ると、顔は酷く歪んでいた。



「×2に子持ちって、姉の彼氏より最悪じゃない・・・・・。

ダメ!絶対にダメ!そんな奴と結婚してどうすんの!」



ヒステリックに母は声を上げる。



止めてよ、やっと私この家を出る事が出来るのに反対なんてしないでよ!



「でも彼しか私の事愛してくれる人居ないじゃない。

結婚してくれる人いないもん」


「お見合いでも何でもいいじゃない。選ばなければ結婚出来る。

あんな奴絶対にダメ!」



やっと掴めた幸せが音を立てて崩れていく。



嫌だ!私はこの家を出たい!

逃げ出したい!・・・・・・・・・・・・・・・・・だから、反対されても私は岡野さんを選ぶ。


急いで部屋に戻ると、岡野さんの携帯へ電話をかける。


・・・・・・・・・・・・・・・・。



出る訳ないよね。

さっき帰ったばっかりじゃん。




「出て来なさいっ!あんな男ゆるさないから!×2なんて恥ずかしくて、皆になんて言えばいいのよっ!」


母が叫びながら扉を叩く。




出ない事はわかってるけど、それでも私は何度も岡野さんに電話をかけた。

しばらくして、自宅で着いたのだろう。

岡野さんがやっと電話に出てくれる。



「もしもし、ごめん!車運転してたから電話に出れなくて・・・・」


「ねぇ!何で2回離婚した事言ったの?!別に今日言わなくたって良かったじゃん!」



焦っている私と、妙に落ち着いている岡野さん。

2人は対照的だった。



「僕がDVをする人間ではないって事を、お母さんにわかって欲しかっただけだよ」


「お母さんが怒っちゃって、凄い反対して・・・・」


「反対?」


「離婚歴ある人との結婚は許さないって!だから・・・・・」



彼にとって×2はそんなに大きな問題ではないのだろうか。

私はまだ結婚した事がないから、離婚を経験した人の気持ちがわからない。



「へぇ~・・・・・そうなんだ。なら、今すぐうちに追いでよ」



今までとは彼の口調がガラリと変わった。

アッサリした物の言い方。



「え?」


「お母さんに反対されたなら、うちに逃げてくればいい。

うちは広いから2人で住むには十分な広さだろ。

一緒に住むって言ったじゃないか。

俺がマイを幸せにするって約束しただろ?そんな家捨てて、俺の家にくればいい。今すぐに

愛してるよ、マイ。来るの待ってるから」



そうだよね。私バカだった。

迷う必要も焦る必要もなかったのに。

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