第19話隠し事 5



私からは何も聞かなかった。

しばらくして彼が苦笑いを浮かべながら


「テレビの大きさは50だよ」


教えてくれた。



「そうですか。大きいですね」



テレビの大きさくらい隠す必要ないのにね。

それが言いにくいという事は、後ろめたい事があるからでしょ。



何で隠すんだろう。

騙されてるのかな?利用されてる?

やっと私の事を愛してくれる人に出会えたと思ったのに。



もう騙されるのも利用されるのも嫌だ。

私は心から誰かに愛されたい。




「あの・・・・・、聞いて良いか迷ったんですけど・・・」


「ん?何ですか?」



ここで関係が終わってしまっても構わない。

むしろ利用される位なら、ここで終わらせてしまった方が良い。



「岡野さんは以前結婚していたんじゃないですか?・・・もしかしてお子さんも居たのかな~?なんて・・・・」


彼の顔つきが変わった。

顔が歪んでいく。

苦笑いを浮かべ、



「あぁ・・・・、やっぱりわかります?・・・・そっか、バレちゃいましたか・・・・・。

隠すつもりはなかったんです。先に僕の事を知ってもらいたかったから・・・・・。

全てお話します。どこか公園に移りましょう・・・・」



ほらね。

やっぱり私の勘は当たったんだ。



車はゆっくり公園へと向かっていった。






静かな公園に着くまでの間、彼はずっと同じ言葉をつぶやいていた。


「違う。違うんだ。騙すつもりも隠すつもりもなかった。

ただ僕の事を先に知って欲しかったから・・・・」



騙すつもりがなくても、隠していた事には変わりはない。



大きな池がある公園。

丁度この時は誰もおらず、貸切の状態。

ゆっくり話をするには絶好のチャンスだった。


公園に着き、ベンチに座ると


「じゃあ全てを話します」



彼は私から視線を外し、遠くを眺める。




「僕が24歳の時、出会い系で出会った6歳上の女性と1年間同棲した後結婚しました。

その人は元々無職で振り込み詐欺にあってそのショックで鬱になり、子供を出産した後、結婚生活5年目でお金を全て持って蒸発」



蒸発。

その言葉が頭の中に響く。



「裁判所から書類が来て、強制的に離婚。今奥さんが何処にいるか?はわかりません」



彼も家族が蒸発したんだ。

私と同じ傷を抱えてる。



「当時は苦しくて悲しくて、毎日泣いて生活してた。自殺しようって思ったけど、家族の支えがあり、なんとか生きようって・・・・」



そういえば、以前彼から貰ったメールにそんな事が書いてあったっけ。

毎日泣いて眠れなかった日々。

それは奥さんとお子さんが突然目の前から消えてしまったからだったんだ。



「その後、結婚相談所で出会った人と結婚しましたが、半年後に離婚しました。僕は×2です。

騙すつもりは全くなかった!×2と言えば、僕の話を聞く前に、皆逃げていく。

DVをしたとか、そんなんじゃない! 過去の話をする前に僕の事を知って欲しかったから!!!」



×2子持ちか・・・・・。

姉の彼氏よりも最悪な条件だ。

ただ岡野さんは働いてる。




母の許しは得られない。

けど、岡野さんは私の事を愛してくれている。

岡野さんと結婚したら、私はあの家を出る事が出来る。

母なんて私の事を愛してくれないのだから、そのまま縁を切っても良いじゃない。


もし、母を捨て岡野さんを選んだとして、岡野さんと結婚生活が上手くいかなかったらどうする?

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