第15話隠し事 1

彼は約束通り2時間で私を家に帰してくれた。



To  岡野裕也

Sub 無題

Text 今日はありがとうございました

   実際にお会いして更に大西さんの事が好きになりました

   また僕と会って下さい そして僕の事をもっと知って下さい



家に到着し携帯を確認すると、彼からメールを受信していた。

私の印象は悪くなかったみたい・・・・・・・良かった。


これで私がこの家から抜け出す一歩を踏み出せた気がする。

でもまだまだ、これからもっと頑張らなくちゃね。



誰も私の帰りを待ってはいないであろうこの家に、今日も帰る。

私にはここしか居場所がない。



ただいまも言わず、静かに扉を開けたつもりなのに、


「おかえり!ちょっとアンタ!」


母がリビングからドタバタと走りながら出てきた。

出迎えてくれるなんて珍しい。

何かあったのだろうか?



「さっき千恵伯母さんから電話が来て、アンタが男の人のラーメン一緒に食べてた所を見たって言うんだけど、それ本当なの?」



うぇ・・・・・・、見られてたの?

嘘ついちゃおうかな?・・・でも、後から怒られるのは嫌だ。

じゃあ何って説明しようか、付き合ってるという訳でもないし。



「あぁ・・・うん。最近知り合った人で、まだ何もないんだけど」



さっさと会話を切って部屋に逃げようとする。

すると母は私の両肩をガッチリ掴むと、


「何歳?何処で働いてる人?見た目はどんな感じなの?」


色々と質問をしてくる。

下手な事を言って何か言われるのは嫌だ。



「31歳で仕事してて、見た目は清潔感がある感じで・・・・まだ知り合ったばかりだから」


母を振り切り部屋へ戻る。




「ちょっと!ちゃんと教えなさいよ!私はあんたのお母さんなのよ!」


何が 私はあんたのお母さん よ。

いつも私の事をバカにして邪見に扱ってきた癖に、こんな時ばかり母親ヅラしないで!

怒りがこみ上げる。

しかしここで言い返してご機嫌を損ねたら、何をされるか?わからない。



「本当にまだ出会ったばかりで何も知らないの!何かあったら話すから」


ゆっくり母の手を肩から外し、部屋へと歩く。


時間の無駄としか思えない行為。

こんな無駄な時間を過ごしてる間に、1通メールを送る事が出来る。



「そうやっていつも反抗して!ここまで大きくなれたのは誰のお陰?!

アンタを育てるのにどれだけ苦労したことか!」



いつもの説教が始まる。

どうせ最後には「これだからお父さんに似たアンタは情がなくて可愛くない」って言うんでしょ。

そんな言葉、もう聞きたくない!



無理やり会話を終了し、部屋に入ろうとすると

この騒ぎを部屋の中で聞きつけたであろう、姉彼と姉が扉からヒョイっと顔を出す。



「え、何?舞子に男が出来たって?うわっ、ありえねぇーーー。どんな物好きだよ」


「どうせ見栄張って嘘ついてるんじゃないの。誰にも相手にされないからってみじめな奴」



汚い笑顔を浮かべながらこちらを見ている。

耐 エ ラ レ ナ イ 。 



「アンタ達には関係がない話よ!首を突っ込んでこないで!」



急いで部屋に入り扉を閉めた。

携帯を取り出す。



メールを打たなきゃ。

1通でも多くメールを打って、早くこの家から抜け出してやるんだから。



「これだから舞子は可愛くない!こういう所もお父さん似ね。

それに比べてお姉ちゃんは私に似て素直で可愛いんだから」


廊下から聞こえてくる母の声。

聞きたくない!聞きたくない!聞きたくない!



To  大西舞子

Sub 無題

Text 今日はありがとうございました。ラーメンご馳走様です^^

   私も岡野さんと実際に会って、素敵な方だな~って思いました。

   またお暇な時にでも誘ってください^^



送信。


今はまだ我慢しよう。

頑張ればきっといつかはこの家から抜け出す事が出来る。

幸せになれる。

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