第4話 AV観たい

「桜雪…あのさぁ…AVが欲しいんだけど…付き合ってくれない?」

「やだ」

「なんで?」

「かっこわるい…あぁいう店嫌い…風俗行った方がいい」

「そんな金ないよ俺」

「オマエ…今日いくら使った?メシ食って買い物してAV買うの?その金で風俗いけば?同じくらいだよ」

「バカ!AVは好きなときに観れるんだよ!何度でもな!」


 どうでもいい…。


「前さぁ…この店から常務が出てきてさ~、俺、挨拶したんだ…無視されたけど」

「嫌われてんじゃない…僕も人のこと言えないけど…オマエも嫌われるタイプじゃん」

「嫌われてねぇよ!気まずかったんじゃないかな…」

「そう思ったら、見なかったことにしとけよ…そういうとこじゃないかな…たぶん…」


 20分…。

「ねぇまだ~…帰りたい…眠い…明日仕事…」

「まだ…選んでねェ…車まで送ってよ~、その後、1人で何時間掛けてもいいから」

「付き合わせた意味が無いだろ」


 なんだろう…店内の90%がアダルトコーナー…思い切ったレイアウトだ。

 迷いを感じない。

 一直線だ…。


 しかし…ポツリ…ポツリとはいえ、他人が入ってくるものだ…隣はスポーツ施設なのに…真逆だ…陰陽がハッキリした立地だ。

 風水の妙を感じる。


「今日、買うの止めようかな~」

「そうしろ…帰ろ…眠い」

「眠い、眠いって、まだ20時だよ!」

「何時だろうと眠いものは眠い」

「解ったよ…ココから選ぶよ…」

「選ぶの?帰らないの?」

『通』は100円DVDなるものを物色し始めた…。

(長くなりそうだ…解る…そして失敗するんだ…100円だもん…ジュースより安いもん…)


「コレどう思う?」

『パーフェクトボディ』…。

「いいんじゃない…完全な身体…うんソレにしろ」

「いや…こっちもいいかも…」

(どっちでもいいよ…何と何を比べてるんだよ…)


 買いましたね…100円DVD2枚…。

 なんだろう…6,000円の謎の美容器具は即断だったのに…エロDVD、200円は苦渋なんだ…。

 理解し難い男だ…。


 車に戻るなり…ビニールを剥がし、DVDを眺めている。

「早く車出して…」

「おう!まぁ楽しませろよ」

「なに?DVD眺めて楽しいの?早よ家帰って楽しめば?」

「いや…なんかこの瞬間が一番楽しんだ…」

「じゃあ買わずに、好きなだけ店で眺めてればいいじゃん」

「そうしたいよ!お前が居なけりゃな!」

(じゃあ…なんで僕を誘ったんだろう…僕が、その手のものに興味ないの知ってて…)


 ホホホ…オホッ…ホホホ…。

 帰りの車内でハンドルを握る彼の運転は荒かった…。

 事故らず帰ってね…。

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