第10話 お披露目会と言う名の誕生祭

 うぉ…緊張する……。


 今、神殿の前には沢山の人だかりが出来ている。皆今日の主役を今か今かと待っているのだ。

 そう、今日は俺のお披露目会。十数年も待たせてしまったから、民達を安心させようと早めに執り行う事になったのだ。

 兎に角熱気が凄い…俺の部屋は結構高い場所にあるのだが、そんなところでも熱気の強さが伝わってくる。余り人前に出たいとは思わないが、今日ばかりは仕方がないだろう。

 こんなにも沢山の民が、俺を……いや、新たな八咫鴉の誕生を待ち望んでいたのだから。


 俺は迎えにやって来たティフラインの肩に乗り、神殿の入り口にある扉の前に移動した。実は動き安さを考えて最初は人型で行くつもりだったのだが、民達に本来の姿を見せてやって欲しいと言われたのでいつもの姿でいる事になった。だが今日は俺のお披露目会なので、フィオナは人型だ。

 同じく扉の前までやって来たフィオナの肩に飛び移ると、静寂が訪れた。扉の奥に人の気配を感じるので、神殿の関係者が静めたのだろう。


 聖騎士達の手により、ゆっくりと扉が開いた。そしてフィオナが歩き出し、中央に設置された仮の祭壇を登っていく。

 後に続いたティフライン教皇が民を振り返り、言った。


『此処に、第五代八咫鴉クロード様の誕生を宣言します!』


『『うおおおおおおおおおお!!!』』




 その日、アストラ王国は翌朝までその興奮が冷める事がなかったと言う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る