仲良し姉妹

「えーと、こんなもんでいいの?」

「そうですね。このくらいの深さなら大丈夫ですね」


 あの日から数日後。女勇者さんとスケルトン少女さんは、裏庭で花壇や植木鉢に花を植えている。

 ボクは朝日を浴びながら、その様子をベンチに座り眺めていた。


「えーと、こんな感じで……」

「あー! そんなに力を込めて土を叩いたらダメですよ!」

「え? ああ、ごめん!」


 あの後、女勇者さんはかなり後悔して、気絶したボクに一晩中付き添ってくれたらしい。

 そして、次の日、スケルトン少女さんの話をしたら、なんとか誤解も解けた。そして、恋人を見つけたいというスケルトン少女さんの心に感動し、協力したいと言ってくれた。


「うん、これで平気ね。うまく咲いてくれるといいんだけど……」

「大丈夫です! 姉さんの気持ちが込められているんですから!」


 たった数日間だけど、女勇者さんは自分のことをお姉さんと呼ばせ、姉妹の様に仲良くなっている。

 不死族でもなんのためらいもなく仲良くなれるって言うのは凄いと思う。

 まあ、そう言う人だからボクも好きになったんですけどね。


「あの、大丈夫ですか?」


 ボクがぼんやりとそんなことを考えていると、スケルトン少女さんが話しかけてきた。女勇者さんはまだ花壇の側でなにかをしている。


「ああ、うん。二人が仲が良くてよかったなぁ……って、思って」

「はい、お二人には本当に感謝しています」


 スケルトン少女さんは明るい声で言う。


「そう言えば、なにか思い出しましたか?」

「ええ、それが……あの崖の下に行った時にちょっと気になる数字を思い出したんです。気のせいかもと思ってたんですけど……」

「数字ですか? ちょっと待っててください」


 ボクは紙とペンをとりに部屋の中に入る。

 彼女が目を覚ましたという場所まで行ってみたが手がかりはなかった。でも、数字を思い出したなら有力な手掛かりになるかもしれない。


「お待たせしました。じゃあ、ちょっとその数字を書いてみてください」


 紙とペンをスケルトン少女さんに渡す。彼女は何度か考え込むが、ある数字を書くとその紙をボクに渡してくる。


「やっぱり……ちょっと待っててください」


 そのメモを手に、もう一度ボクは家に戻る。そして、地図を広げてその数字の場所を住所と照らし合わせる。


「あれ……どういうことだ……」


 もう一度、数字を確認する。しかし、その数字の場所は明らかにおかしい。


「どうしたの?」


 二人も家の中に入ってくる。


「いえ、この数字は住所かと思ったんですけど、地図でその場所を確認するとドワーフ族の工場しかないんですよね……働いている人もドワーフ族だけのはずですし」


 ボクは腕を組んで考え込む。

 彼女の記憶違いや数字に別の意味が?

 いや、それならここまで一致するのはおかしい。

 じゃあ、彼女の彼氏はドワーフ族……いや、あのドワーフ族が人間族の恋人とかないはずだ。遊びで付き合うとかならありうるけど……


「なに迷ってるのよ。実際に行ってみればいいじゃない」


 女勇者さんはそう提案してくる。


「うん、ちょうど今日は休みだし、この子と街にも行ってみたいしね」

「え、街ですか……」


 楽しそうな彼女に対して、ボクは思わず顔をしかめてしまう。


「ちょっと、何よその顔は」

「いえ、その……」


 ボクはスケルトン少女さんの方をちらっと見る。さすがに本人の前だと、不死族が嫌われていることは言いにくい。


「不死族である彼女が出歩くのは、ちょっと危険かもしれないんで……」

「危険てなによ? 大丈夫よ。いざとなったらあたしが守ってあげるから。さあ、そうと決まったら、着替えなきゃね!」


 そう言うと女勇者さんは、スケルトン少女さんを連れて二階へとさっさと上げって行ってしまう。


「あ!ちょっと……うーん、大丈夫かな……」


 ボクは不安を覚えつつも、着替えるために二階へと上がった。

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