第5話
魔法を使うに当たって大事なことは、顕現させたいものの原理・構造を理解し、その具象をしっかりとイメージすることである。
言ってしまえば、それさえできればあとは魔法式を唱えるだけでいい。
だから、
「ファイア」と俺が口にすれば、俺は掌の上で炎を顕現させることができる。
「え、すごい」とエレナが関心というか驚く。
「何が」
こともなげに俺はきょとんとする。
「だって、やり方を聞いただけで魔法を成功させるなんてなかなかできないよ。きっと才能があるんだよ」
まあ、才能はあるよ。女神から魔法と剣の才能を授かっているわけだし。
「でも、初級魔法だろ。簡単にできて当たり前なんじゃないのか」
「初級魔法でも最低限の勉強と練習は必要だよ。原理と構造を理解しないといけないわけだし」
原理と構造を理解しないといけないと言われても、火と水と風の発生原理なんて学校の授業で習うのだから、何ら問題はない。
「本格的に勉強したら?」
「どうやって? 学校へ行くには金がかかるんだろ?」
「私が教えてあげる」
「自分の勉強はいいのかよ」
「独りで勉強するのはつまらないから」
「一緒に勉強する奴いなかったのか」
「周りの魔法が勉強したい子はみんな学校へ行ったから」
「まあ、そういうことなら」
「じゃあ、よろしく」と言ってエレナは嬉しそうに微笑んだ。
エレナの家で居候の身になった俺は鍛冶の仕事を手伝って、エレナに魔法を教わる日々を過ごす。
鍛冶の仕事は大変で、日本で事務仕事をしていた俺にとってはヘトヘトの毎日だ。鉱石採掘を始めとした肉体労働のおかげで結構な筋力が身についた。
魔法の勉強に関しては、女神から授かったチートである魔法の才能があるおかげで上達は早い。とはいえ、エレナに教えてもらっている手前、彼女より魔法が上達することは避けなければいけない。正直、彼女に教わって、そして自分でも勉強をすればすんなりと彼女を超えられそうである。というか、超えられる域まで到達してしまった。なので、そろそろ剣術の方も学びたいなと思うこの頃である。
と、まあ、そんな感じで異世界生活に慣れて馴染んだある日のことだ。
異世界生活における初めてのイベントが発生した。
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