第2話 これってスライム?

(暗いな……真っ暗でなんも見えないぞ、ここはどこだ? てか、どうなったんだ、何も聞こえないし、臭いも感じない、体の感覚までないな……転生失敗か?)


 周りを見回そうとして、気づく、目が開けられない、どうしたものかと頭を動かそうとして動かせなかったので手で頭を確認しようとして……手も反応しない、どうにか動けないものかと試行錯誤していると、身体がわずかに動いた感覚があった。


(お、何とか動けた、何となく身体にだけは感覚がでてきたぞ、てか俺って今、赤ちゃんじゃないのかな? じゃ、今生まれた瞬間てことか?)


 体の感覚に違和感を覚え何があったのか見ようと意識を見ることに集中していると。


(お、見えてきた、見えてきた、あれ? 瞼が開いた感覚がないぞ、何か視界に違和感あるな……ま、見えてるんだしいいか、おや? ここは洞窟か? 光ってるのは……ヒカリゴケかな? お、あっちの方に湖がある地底湖ってやつだな、ってか、頭(?)以外の感覚がないな……どういう事だろ? 首が回らないから体を見れないし……地底湖の水面を鏡代わりにして自分の姿を見てみるか)


 何とか体をというか頭を動かし引きずるように地底湖の方へ移動し、水面に映る自分の身体を見て絶句することとなった。


(嘘だろ、これって、この流線的な美しい楕円型はもしかして……スライムさん! スライムに転生? これで世界を救えってか! 無理だろ! どうしろっていうんだよ、詰んだな……)


 しばらく絶望に打ちひしがれて洞窟内をあてどなく呆然と進んでいたらだんだん身体が軽くなってきて意識せずとも体を動かせるようになってきていた


(なんか自分がスライムだと自覚したらスムーズに体が動くようになったな、見え方も目で見てるんじゃないんだな、意識した方向が見えるというか認識できてるって感じだな、見え方もはっきりしてきたし体が馴染んできたのかな?)


 それから体を動かしてジャンプしたり走る……というか高速移動したり回転したりと色々な動きを試してみた、身体の形状は大きく変わる事も無く、楕円形が少し歪む程度の変化しかなかった。

 改めて周りを見回してみると、洞窟内は結構広いとこだった地底湖もどこまで続いているのか対岸が見えなかった。


(さて、これからどうしたものかな……スライムに何ができるんだろう? チートスキルとかくれなかったのかな~? 誰かに聞こうにも誰もいないし、そもそも言葉を発せないし何も聞こえないんだよね……せめてリエルと連絡取れないものかな~?)


 心の中で『リエル』とか『バカ女神』と叫んだり何とか声を出そうと四苦八苦していたが全く成果が無かった、かなりの時間が経過したはずだが空腹感やトイレに行きたいといった排泄感もなかく、さらに眠くもならないし疲労感もなかったので、その後も不眠不休で自分の身体で何ができるかとか色々試していた。


(んー、時間の感覚が全く分からないんだが、数日はたったよな? んー色々動き回ったけど生き物にも一切出会わないし、洞窟から出ようにも外への道が分からない……ここで一生過ごして終わりとかじゃないだろうな、手がないから地面に地図もかけないし、この洞窟内が結構硬いから壁に傷もつけれないから床とか壁に印をつけるなんて事もできない、似たような場所ばっかりで迷っちゃうんだよな~)


 さらに数日洞窟を探索していたら天井に穴が開いている場所を見つけた。そこは草が生い茂った空間で、天井までは遠くて外に出れると言う訳ではなかったが、これで元の世界と同じなら朝昼晩を確認して1日を感じれると思った。


(なんか体が縮んできたような気がするんだが……何も食べてないからとかかな? そうだ! この草食べれないかな~? 口が無いから無理か、てか毒草という可能性もあるか……試してみるか――――


 どうにかならないものかと、草の上に乗って身をよじったり飛び跳ねたり転がったり色々してみた。


 ――――スライムって体内に取り込んで溶かして捕食って感じだと思うんだけど中々うまくいかないな……)


 悩んでいると、いきなり頭の中に声が響いてきた。


〈告知:【捕食】 【溶解】 【吸収】を獲得しました〉


 その声が聞こえた後に、草を取り込んで溶かして吸収する事が出来るようになった。とりあえず頭の中に響いてきた声に呼びかけてみた。


(おーい、どちら様ですかー?――――返事がないな、これってあれか、システム音声のアナウンスとかか? というか、【捕食】と【溶解】と【吸収】か、これってスキルってやつなのかな? 草を食べれた? のはこれのおかげか、これ、【溶解】と言うくらいだから溶解液とか吐けないのか? 説明が欲しいとこだな)


 そこから数日、得たスキルで何ができるのか試したが、石は取り込んでも溶かせなかったし、溶解液もだせなかった。草を取り込んで溶かして吸収する以外は他にできることはなかったが、体の大きさが最初の頃の大きさに戻っていた。そして体がもとの大きさに戻ると、草を溶かせても吸収ができなくなった


(それにしても、結構草を食べてるけど全く味がしないな、やっぱ味覚ないのかな~?)


 さらに数日、洞窟探索と危険なモンスターに合っても戦ったり逃げたりできるよう体の動かし方の練習をして、慣れてきたら攻撃方法の模索や逃走のため移動を出来るだけ早くする特訓を始めた。


(特訓始めてから結構たったな……とりあえず攻撃は体当たり以外、何もできなかったな、しいて言えば回転して威力上げた体当たりくらいかな? たかが知れていて頼りない攻撃だけど……でも、動きは結構早くはなったからこれなら結構逃げれそうだな)


 さらに半年はたとうかと言うときに、やっと外の光が見えるところまでたどり着くことができた。しかし、そこからすぐに外に出ていいものか迷っていた。


(やっと洞窟の外に出れるんだけど、外はどんな危険な生物がいるか分からないんだよな……なんだかんだ言っても洞窟は安全だったしな、んーとりあえず洞窟を起点に少しずつ外の様子を見て、危なくなったらすぐ洞窟に逃げ込むかな?)


 これからの方針を決め洞窟の周りを少しずつ安全を確認しながら探索していったが、幸いとしてと言っていいのか、見た目はリスなどの小動物は見かけるのだが、大型の動物とか魔物っぽいのとかは全く見なかった。俺以外はね。


(この辺りは安全そうだし、そろそろ行動範囲を広げてみるかな……人に会ってみたいけど、今の自分はスライムだからな~喋れないし攻撃されそうでもあるな……何でもいいから情報欲しいな~)


 行動範囲を広げた結果、洞窟は森の中にあることが分かった、さらに森を探索すること約二ヶ月、思ったよりも広い森らしく森から出ることができないでいた。 二ヶ月の間に魔物見たいのには出会うことも見かける事もなかった。

 ただ動物は、狼っぽいのとダチョウっぽいのとは出会ったが、襲われることもなくやり過ごせた……というか無視された。


(野生動物にとってはスライムなんて弱いし食用にもならないから襲う価値もないのかな? それはそれで助かるんだけどね~、スライムにプライドなんてないしな! 最弱だろうしな! こうなると野生生物より人間の方が怖かったりしてな……スライムなんてただの魔物だろうし、魔物狩りとか言っていきなり襲ってきそうだな……)


 とりあえずは、周辺に気をつけながら森を抜けて道を探すことを目的として散策を開始したが、行けども行けども森だった。


(この世界、俺以外は動物しかいないとかいうオチじゃないだろうな? なんだかんだで、洞窟を出てから前の世界の感覚でもう365日いわば一年は経ってるぞ、いくらなんでもほとんど動物に出会わないし道にも出ない、川もないとかおかしすぎないか? これ、世界救うとか言う以前に寿命で死んでしまうんじゃないだろうな?)


 不安になりつつも、何かスキルをえれないか日々試したり体を鍛えたりしていた。そしてそんなこんなでさらに1年たった。


(もう2年か……あんまり変化なくて飽きてきたな、一応はスキルをいくつか新しく覚えはしたけど、出会いがない! 動物とでもいいから意思の疎通が出来るのに会いたい……精神的にきつくなってきた。せっかく念願のスキル得たんだがな……)


 獲得したスキルは【熱感知】 【高速移動】 【硬質化】 【毒耐性】 【超音波】 【音波感知】最後の2つのおかげで喋ることと音を聞くことができるようになった。正し、喋る練習は日本語なので、この世界ではまず使われていない言語だったけどな。


 さらに1年たってようやく川を見つけた。


(3年たってようやく川か! 広すぎるわ! でも、とりあえず川を下って行けばどこかに人の集落あるかもしれないな、最悪海まで出てもいいしな、人がいるなら海で漁くらいはしてるだろう、ま~問題はどうやって川を下るかだな、川沿いを移動するか、川に浮かんで流されて移動か……でも、滝があったら嫌だな……滝つぼでスライム生終了とか洒落にならん。とりあえず安全優先で川沿いを移動するか)


 川沿いを移動すること半年、代り映えのしない風景が続いていたがその日は違った。遠くに煙が上がっているのが見えたのだ。


(ん? なんか煙が見えるな、人がいるかも! って、あれは生活の煙とか言う感じじゃないな、火事とかか? とりあえず近くまで行って様子を見るか)


 早速、【熱感知】を最大にして辺りに気を付けながら【高速移動】で、煙がのぼってる方へ移動を開始した。

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